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1979年ノーベル物理学賞受賞者 Steven Weinberg博士

Steven Weinbergr博士のメッセージ

スティーブン ワインバーグです。テキサス大学オースティン校で物理・天文学科の教授をしています。

おはようございます。ここはテキサス大学の私のオフィスです。これは、新しい素粒子加速器建設のプロジェクト国際リニアコライダープロジェクトに向けたメッセージです。

ILCは特別なアドバンテージを持つ加速器です。物理学には色々なフロンティアがあり、その中の高エネルギーフロンティアでは、最近では陽子のビームを衝突させる大型の加速器を建設して研究を進めています。そのような加速器の非常に分かりやすい例が、欧州の大型ハドロン衝突加速器です。非常に高いエネルギーに増強した次世代のLHCからこれまで、つくることが不可能であった重たい新粒子を発見できることを私たちは望んでいます。

もうひとつのフロンティアに高精密フロンティアがあります。そこで私たちは、物理の反応過程を調べるための理論的な予測を非常に精密に行うことが出来ます。

その予測との、ほんの少しの違いからも、全く新しいそれまで未知であった物理の世界を拓くことができます。
そして、これは電子陽電子衝突加速器の場合は、より当てはまります。電子と陽電子は、陽子と異なり素粒子です。
物理の反応過程 — 電子と陽電子が衝突したときの反応過程は、非常に精密に測定することが可能で、私たちが知らない物理は無い、という仮定の元ではありますが、予測と実験結果を突き合わせることで、新しい何か、新粒子や新しい力などが存在するか否かがわかるのです。

電子陽電子衝突はとてもクリーンなので、非常に正確な計算ができます。ですから、ヒッグス粒子よりも重い粒子が生成される反応、例えばヒッグス粒子が、一瞬だけエネルギー保存則を破って、ヒッグスより重い全く新しい粒子を生成して、それらの粒子がまたヒッグス粒子や他の既知の粒子に姿を変える、というような反応まで検出することができるのです。

このようにして電子陽電子リニアコライダーは、新しい物理を発見する素晴らしい道具になるのです。物理学全体が、このような加速器から得られるデータから恩恵を受けます。

そして、この加速器をホストする国は必然的に、最も素晴らしい恩恵を受けることになります。ILCで加速器の建設に携わり、加速器を使うこともできる次世代の科学者のトレーニングのみならず、加速器科学からの技術的なスピンオフは、とりわけ実りの多いものになります。例えば、宇宙開発等よりずっと有益だと私は思います。なぜなら、オンライン・コンピューティングや、高磁場技術、冷凍技術など多岐の分野にわたるからです。

この加速器が日本に建設されることは至極、当然のことです。日本は早い段階で、基礎的な素粒子物理学の重要な地位を占めました。1930年代の湯川、1940年代の朝永の理論的研究にはじまり、ここ数十年は、地下の大型の測定器カミオカンデを使って稀な反応を調べることで、実験物理学でも重要な役割を担っています。しかし、加速器物理学ではあまり活躍していません。

今こそ、日本がその技術力を持って、リーダーシップを執り始める時です。私は、この新しい加速器プロジェクトを日本がホストすることは、日本にとって賢い選択だと思います。そしてこの計画を世界の科学コミュニティが支持することも、賢い選択だと思います。なぜならこの加速器が産み出すデータや洞察は、とても価値あるものだからです。

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