加速器を知るAbout Collider
加速器とは
電子レンジも加速器?
「加速器」は、電磁波などにより粒子を加速しエネルギーを高める装置の総称です。粒子の加速には電気の力(電場)を用います。
加速器は科学の実験をするのに欠かせないものですが、研究機関にある装置だけが、加速器というわけではありません。 私たちの生活の中にあるものにも原理が似ていたり応用技術が使われたりしている加速器の仲間がたくさんあります。 例えば、電子レンジがあげられます。 エネルギーが大きいものはその温度も高くなりますが、電子レンジは物の中の水分子に電磁波をあててエネルギーを加えることによって物をあたためることができます。 また、医療用機器としても、加速器は活躍しています。 がん治療においては放射線をがん細胞にぶつけてがん細胞を死滅させる方法がとられることがあります。 放射線とは光子(光の粒)や電子などの粒子が加速されて弾丸のように飛んでいるものをいいます。 がん治療に用いられる放射線は、光子や電子を加速器によって加速することによって作られます。
どんどん進化する加速器の歴史
本格的な粒子加速器の実験は、1930年代にジョン·コッククロフトとアーネスト·ワルトンによって考案された直流高電圧による「静電場加速器(コッククロフト·ワルトン型加速器)」や、アーネスト·ローレンスによって考案された、高周波空洞技術を取り入れた円軌道加速器「サイクロトロン」などから始まりました。これらの加速器は科学的に大きな役割を果たし、コッククロフトとワルトンは、静電型加速器を使った「人工的に加速した原子核粒子による原子核変換」で、ローレンスは「サイクロトロンの開発および人工放射性元素の研究」の功績でノーベル物理学賞を受賞しています。
1944年には「位相安定性の原理(特定の高周波位相の周囲には、エネルギーのばらついた粒子が集まり、安定に高エネルギーまで加速できる)」が発見され、この原理を加速に用いる加速器である「シンクロトロン」が誕生しました。さらに1952年、四重極磁石などを用いた「強収束の原理(極性が交代する2種類の四重極磁石を周期的に並べると、垂直·水平方向が独立に収束する)」が発見され、粒子を加速するエネルギーはそれまでの1万倍から10万倍もの、飛躍的な進歩を遂げました。
加速された粒子ビームを使った実験方法にも革命的な進歩がありました。当初は、粒子ビームを固定した標的に当て、どのような粒子が出てくるかを観測していました。この方式では、粒子ビームが持つエネルギーのごく一部が反応に用いられるだけですが、2つの粒子ビームを正面からぶつければビームのエネルギーが効率良く反応に使われます。そこで、加速した粒子同士を正面衝突させる衝突型加速器(コライダー)が開発され、衝突エネルギーが飛躍的に発展しました。
次はILC!
国際リニアコライダー(ILC)は、世界最高エネルギーまで電子とその反粒子である陽電子を正反対の方向からそれぞれ直線上に加速し、正面衝突させます。
加速した粒子同士をぶつけることによってエネルギーのかたまりを作り出し、そこから噴出する様々な粒子を観測することが目的です。加速器で加速された粒子が速ければ速いほど、より大きなエネルギーを作り出すことができ、そこから発生する粒子も、希少なものとなります。
ILCでは、電子と陽電子をそれぞれ極限速度である光速近くまで加速することによって、宇宙初期に迫る超高エネルギーの世界に到達します。