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もしも日本にILCができたら

ILCで変わる日本

ILCの設計、建設、運用は、幅広い分野の多くの企業・技術者の人々と素粒子研究者、そして建設地の地域の方々をはじめとする多くの皆さんの力を合わせてはじめて実現されるものです。また、ILC建設による成果は、技術の産業波及、地質や環境などの調査、教育・医療・文化育成への利用など、多岐に渡って還元されていきます。ILC計画は、まさに、分野の垣根を越えた一大プロジェクトといえるでしょう。この一大プロジェクトで、日本という国が様々な観点で変容することは想像に難くありません。

国民の誇り、世界の尊敬と安全保障

日本は世界が認める素粒子と加速器の大国。ノーベル賞候補者を多数もち、加速器の技術でも世界のトップを誇ります。

米メリーランド大学と英BBC放送が2006年におこなった世界約4万人を対象に実施した共同世論調査では、33カ国中31カ国で「世界に好影響を与えている国」のトップが日本でした。ところが「尊敬される国」としての位置は決して高くない、という残念な結果になっています。

世界拠点となる国際研究施設が日本にでき、素晴らしい成果がそこから産まれることは、日本の国際的な地位の向上にもつながり、世界から尊敬される日本への足がかりになることが大きく期待できます。また、ILCの実現によって、国民の日本に対する誇りも醸成することができるでしょう。ILC国際研究所の誘致は、世界で「最も好まれる国」から更に踏み込んで、日本が一番多くの国から尊敬を受ける国となる契機となります。

そして、ILCから産まれるソフトパワーとしての最先端科学技術を、国家の明確な意思をもって、外交の穂の一つとすることは、日本の安全保障にも貢献することが出来るでしょう。

スーパーカミオカンデ

スーパーカミオカンデ:素粒子ニュートリノを用いた宇宙望遠鏡といえる。また、姉妹の「カムランド」は史上初めて地球内部からのニュートリノもとらえた。

KEKBファトリー

KEKBファトリー:米国同型機種を大きく引き離し世界一の強度を誇る電子・陽電子衝突型加速器。物質と反物質の違いを説明する小林・益川理論を検証。

J-PARC

J-PARC:ニュートリノ原子核から物質・生命まで幅広い研究分野に活用出来る世界最高強度の多目的陽子ビーム施設。

日本発、世界へ。科学を創造する「知の拠点」

知の拠点イメージ

宇宙の謎を解明するために世界中から日本に「優れた人」が集まり「新しい知」を生むーILCはそんな「世界の知の拠点」となることが期待される研究所です。

宇宙の起源の解明は人類誕生以来の共通の目標です。それは宗教・国境を超え世界が協力できる数少ない共通の目的といえるでしょう。実際に今も、イスラエル・パキスタン・中国・日本・アメリカなど、世界の様々な人々が融け込んでひとつのチームとなって研究を続けていることが、それを象徴しています。ILCが日本にできることにより、世界中の素粒子物理および加速器科学の研究者及び学生は日本に集うことになります。世界の様々な文化を背景とする多くの人々が日本を舞台として活躍し、日本は新たな文化・技術の創造・発信の拠点となることでしょう。

ものづくり大国・日本の再生へ

素粒子物理学の研究は、現代の産業、暮らしを支える様々なテクノロジーを産み出しました。電子の発見がエレクトロニクスを、量子力学がライフサイエンス・ナノテクノロジー・ITを生み出した。そして、X線やPETなどの医療診断装置や粒子線治療も生み出しました。加速器のつくる放射光は、創薬・材料設計・分析の必須の基盤となり、電子線滅菌装置は医療・食品衛生を根底から支えています。インターネット社会を創ったウェブWWWも素粒子の研究から発明されたものです。

このように、素粒子物理の研究から派生する分野は幅広く、ILC周辺には、長期的に関連産業分野の企業立地が促進されることが期待できます。また、中小企業をはじめ、地域の企業が競争力をつけることによって、高い成長力を持った、先端科学技術産業の集積が加速化することでしょう。これは、ものづくり大国・日本の再生に向けた、次世代の科学技術・産業の「土台」作りとなります。

また、ILCの建設・運用で、新たな雇用・人材育成機会が創出されることも期待できます。推計では、ILCの建設段階から運用段階に至る30年間で、全国ベースで約25万人分の雇用機会が創出されるとされています。(野村総合研究所資料より)

未来の人材を育成する

資源小国の日本の財産は「人」です。ILCは未来の人材育成にも大きく貢献します。2003年に経済協力開発機構(OECD)が行った学力到達度調査(PISA)の結果が発表されて以来、日本の子どもたちの理科離れ・意欲の低下の危機が叫ばれています。高学歴で成績は良い。けれど意欲が無い・・そんな状況は日本の持つ特有の現象であり「日本病」といっても過言ではありません。

「知の拠点」ILCの形成は、未来を担う子どもたちへの教育や人間形成にも役立つことが期待できます。世界から集積する一流の国際物理学者と直接ふれあい、ノーベル賞級の発見を目のあたりにする子ども達は挑戦することの喜びを見いだすことでしょう。ILCは、子どもたちが日本で世界を感じ、同時に日本の文化と伝統を考える機会も提供できるでしょう。

国民参加型で産学官が連携してILCを実現する過程は、「日本病」克服のひとつの契機になるのです。

日本だからこそできること

このような国際研究施設を日本に作り、世界の文化・技術の発展に寄与することは、世界の素粒子物理学をリードする日本の責務でもあります。宗教・人種を超え、世界中の人々が集う国際研究施設を作ることは、世界に門戸を開くことのできる寛容な国「日本」だからこそできることでもあります。

アジアの時代が強調される昨今、欧・米の2極に加え、第三の極としてのアジア地域に国際研究所が設置されることの人類史的意義は非常に大きなことです。米にはNASAが、欧州にはCERNが、そして近年はITERが誘致され、世界の研究拠点を形成しています。米国では既に中国人・インド人などのアジアの若手研究者がポスドクの主流となっています。アジア地域における代表として日本にILC研究所を設置し、宇宙の謎を探る世界の研究拠点となることは、アジア全域にとって大きな意義を持つものです。実際に、中国、韓国、インド、ベトナム、フィリピン等のアジアの国々の研究者がILCの日本誘致に強い期待を寄せています。

宗教・人種を超え、世界中の人が自然に集う場である「ILC」の立地する場は、世界に門戸を開けられる平和国家・日本こそ最もふさわしいと言えましょう。もし日本に建設されれば、他に例を見ない史上初の「世界の」基礎科学拠点となるのは間違いないことです。日本において民族の融合・宗教の融合が実現し、日本は新たな文化・文明の創造とその発信拠点となるのです。

国際研究施設イメージ

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