加速器を知るAbout Collider

超伝導加速技術

超伝導加速空洞

KEKで開発された超伝導加速空洞

素粒子実験で加速器に求められる性能のひとつが、高いエネルギーでの衝突です。そのための重要な技術が「超伝導加速技術」です。線形加速器では直線状に長く連結された加速空洞の中を粒子が通過することで連続的に加速されます。超伝導加速技術は、電力効率良くビームを加速するために不可欠な要素技術です。

これまでの加速器は常伝導加速技術による加速が主流でした。しかし、常伝導技術の場合、外部から与える高周波電力の約半分は加速空洞部分での電気抵抗による発熱となって消費され、残りの半分しかビームに伝達されません。超伝導加速器では、高周波電力に対する抵抗値を常伝導加速器より約5桁も低くできます。加速電場を発生する加速空洞部分に電気抵抗がないため、全ての高周波電力をビームに伝達することができ、非常に効率よくビームを加速することができます。

超伝導技術はビーム強度の向上にも利点があります。常伝導加速の場合、加速電場を高くするために加速空洞を小さく作る必要があります。典型的な常伝導加速空洞のビーム口径は約10ミリメートルです。口径が小さいほど、粒子ビームを通すのが技術的に難しくなります。超伝導加速技術を使うと、電力ロス(発熱)がないため大きな口径でも高い加速電場を実現できます。口径が大きくなると、ビーム強度(電流)を高めることができ、衝突頻度(ルミノシティ)の向上に有効です。ILCの超伝導加速空洞のビーム口径は約70ミリメートルです。

ルミノシティの向上とともに重要なのがビームパルスの長さです。ビームパルスが短いと、短い時間内に衝突反応が重なってしまうため、測定器で識別することが困難となり、いくらルミノシティを向上させても多くのデータ取得にはつながりません。超伝導技術はビームパルスの長さを約1ミリ秒にすることができます。これは常伝導に比べて1000倍以上長いものです。

ILCでは、高いルミノシティと長いビームパルスを実現することで、より多くの有効な実験データを取得することができるのです。

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