加速器を知るAbout Collider
円形加速器と線形加速器
加速器は、大きく円形加速器と直線加速器に分類されます。
電子と陽電子を衝突させる場合は、円形加速器だと円軌道を周回する電子が放射光を放出してエネルギーを失ってしまいます(これを「シンクロトロン放射」と呼びます)。この損失を抑えるためには、カーブをゆるくする、つまり、円の半径を大きくする必要があることから、加速器は大型化してきました。しかし、この損失はエネルギーの4乗で増加するので、加速器が高エネルギー化するにつれて、現実的に建設できる規模の限界を迎えています。
これまでの最大の電子円形加速器は、周長27キロメートルのCERNの大型電子・陽電子衝突型加速器(LEP)でした。LEPの最高到達衝突エネルギーは210ギガ電子ボルト(GeV)で、これは円形加速器の限界の数値です。さらなる高エネルギー電子加速器を実現するためには、放射光損失効果を受けない加速器である「直線型加速器」の実現が不可欠になります。
しかし、これまでに実現された直線型加速器は、米国の「スタンフォード線形衝突型加速器(SLC)」のみ。直線加速器実現の技術的課題は「加速効率」と「衝突頻度」でした。
円形加速器では、円周部のごく一部が直線加速部で、最初は低いエネルギーの電子あるいは陽電子から加速を開始し、周回毎に加速部で加速しながらエネルギーを高めることができます。一方、直線加速器ではビームを周回させることができません。ビームは長い加速部を一度通過するだけなので、エネルギーを高くするためには、単位長さ当たりの加速量を大きくすることが必要になります。また加速器自体の効率を高める工夫も必要です。ILCでは「超伝導加速技術」を採用し、加速効率を飛躍的に高めました。
もうひとつの課題が衝突頻度です。円形加速器では、最高エネルギーに到達した後に、逆方向に回っている電子ビームと陽電子ビームを何度も交差させることで衝突頻度を高めることができます。直線加速器では、電子・陽電子ビームは加速後に1回しか交差しないので、ILCではビームを極小サイズに絞り込む「ナノビーム技術」で、衝突頻度を向上させます。