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最近のできごと(ILC東京イベントとLHCの再始動)  広島大学  高橋 徹

前回,藤本順平さんのコラムでご案内しましたように,4月22日にILC東京イベントを開催しました。世界から300人を超える研究者が東京に集まってILCの実現をテーマにシンポジウムを行い,ILC実現へ向けた意気込みを東京宣言として公表しました。その様子はこちらをごらんください。その日の夜は,ILCに関わる世界48か国の研究者のソールフード?を集めたフードフェスタを行いました。フードフェスタには,国会議員や企業方々,48か国のうち数カ国からは大使も

出席され,研究者を合わせて総勢約400人という盛り上がりとなりました。会場はホテル・ニューオータニ。フェスタの進行もその道のプロの方の企画という,いつもと全く違うことばかりでした。数カ国とはいえ,大使ご自身のご参加もあり、主催者側にとっては初の試みでしたので、不適切な対応がなかったか、心配もありました。ただ、ご来場下さった皆様の表情を見る限りでは、楽しんで頂けたようで、ほっとしています。会場となったホテル・ニューオータニのシェフにとっても,こんなに多くの国々の料理を集めるというのは初めての経験だったとのことです。その生き生きとした様子

が,東京カレンダーに掲載されています。どうぞご覧下さい。

 

話は変わりますが,素粒子物理学界隈での最近のニュースは,LHCの再稼働です。2012年にそこでヒッグス粒子さ

れ,大きな話題となったのはご記憶の方も多いでしょう。このコラムでもそれに関連したことを何度かお話しました。(LHCは何を見たのか?ヒッグスと茶道祝,アングレール博士とヒッグス博士がノーベル物理学賞受賞
あれからもう3年です。何が行われていたのでしょう。もちろん遊んでいたわけではありません。陽子と陽子の衝突反応を詳細に解析して,発見された粒子の詳細を調べたり,新しい現象が起こっていないか探したり,あらゆる方法で,素粒子と宇宙の原理の探索を行っていました。今のところ,素粒子の標準理論に含まれない新現象は発見されていないようです。一方,LHC加速器本体は,2年以上運転を休止して,エネルギーの増強を行っていました。ヒッグス粒子を発見した時,陽子と陽子の衝突エネルギーは7テラ(7兆)電子ボルト,その後8テラ電子ボルトまで増強しましたが,さらなるアップグレードのため,2013年2月から運転を休止して加速器の改良を行っていました。その改良が終わり,6月3日から衝突エネルギー13テラ電子ボルトで実験を再開しました。実験再開の時のLHCのコントロール室の様子です。衝突エネルギーが大きく向上しました。未知の現象の探索領域が広がったことを意味します。ヒッグス粒子もこれまでより遙かに沢山つくることができるので,その性質の精査も進みます。LHCの将来計画では今回を含めて3回の大きな改良が予定されていますが,衝突エネルギーが大きく向上した今回は新発見の大きな期待がかかります。これから数年間,LHCから何が報告されるのか?目が離せません。

広島大学

高橋 徹

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