Columnコラム
サイエンスカフェ
サイエンスカフェという催しを聞いたことがある方も多いと思う。参加されたことがある方もいらっしゃるのではないだろうか。サイエンスカフェは専門家と一般の方が、カフェでお茶を飲みながら科学について語り合うというものだ。1997年頃にイギリスで始まったと言われている。講演会で科学を語る事はよく行われている。講演会は、話者からまとまった話を聞く良い機会だが、どうしても話者から聴衆への一方的な話になりがちだ。もちろん講演後の質疑応答がとても盛り上がって有意義な対話となることもあるが、基本的には話者から聴衆への一方通行である。
もっと対話に重点をおいたものはできないだろうか? サイエンスカフェはこの様な動機から生まれた。科学者・専門家と言ってもいろいろな人がいるので、リアルタイムのやりとりが好きな人もいれば、あまり得意でない人もいる。筆者は得意かどうか別として、この様な催しは好きなので、話者、企画者両方の立場から10年くらい関わってきた。
私どもの例で恐縮でだが、広島大学理学融合センターが行ってきたサイエンスカフェがここにまとめられている。内容も基礎科学を中心に宇宙素粒子から生物、地学まで多岐にわたる。広島大学内のカフェで行うことが多いが、毎回ほぼ定員いっぱい(約60名)の参加がある。話者と参加者が語りあうには少し多すぎる気もするが、そこを少し工夫している。私たちのサイエンスカフェでは、話題を提供する専門家と参加者の間を取り持つファシリテーターがいる。ファシリテーターの役割はとても重要だ。喋りすぎたり、話が難しくなったりしがちな科学者と参加者のあいだにたって、うまく会話をコントロールする。毎回、本番の前に数時間かけて、話者とファシリテーターの打ち合わせを行っている。打ち合わせをやりすぎると、本番で臨場感が失われてしまうので、その塩梅も重要だ。理学部で開催してきたサイエンスカフェも10年、30回を超えた。これを機に、理学部を超えて、工学や、さらには文化系と呼ばれている(文系、理系という分け方は好きではないが)分野への展開を画策している。またこの機会に科学者と一般の方のあいだを取り持つ科学コミュニケーションについての授業プログラムを開設すべく計画を立案しているところだ。来年度にはこの様子もお話できればよいと考えている。
鬼が笑いそうな話だが、来年2018年1月21日に三菱みなとみらい技術館でサイエンスカフェを開催せて頂くことになった。テーマは「宇宙の始まり」。同館のご厚意により、広島でいつもファシリテーターをお願いしている寺本紫織さんと一緒に開催できることになった。お時間とご興味のある方はご参加いただければ幸いである。
高橋 徹 広島大学 広報部会副部会長