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ドリームチェイサー

サラ・ブライトマンが今年11月末から12月上旬にかけて、日本に来ます。去年の夏に引き続いての公演です。紅白歌合戦にも出場したことのある彼女は、日本でも若い人から年配の方まで非常に人気があるのです。
サラの歌を聴くようになったのは、10数年前からでした。劇団四季のCATSを観に行ったとき、記念に会場でCDを購入して帰ろうと思いました。どうせなら原曲のほうがいいと歌詞付を選んだらそれがサラ・ブライトマンだったのです。
ミュージカルの曲ばかりでしたが、3オクターブともいわれる音域、 伸び、 声量共に申し分のない圧倒的な歌唱力でした。もちろん「オペラ座の怪人」の初代クリスティーヌ・ダーエとして世界的な名声を得ていることは知っていました。作曲者のアンドリュー・ロイド・ウェバーをして「僕の音楽の天使」と言わしめていること自体、ステキ過ぎますよね。

ミュージカルソングだけでしたら、そこまで聴かなかったでしょう。ジャンルを超えてオペラやポップス、ロックに挑戦するだけでなく、イタリア語、フランス語、スペイン語・・・日本語にいたる様々な言語で歌っています。世界的な大ヒットとなった「タイム・トゥ・セイ・グッバイ」、日本ではサッカーのテーマソングにもなった「クエスチョン・オブ・オナー」ドラマの「坂の上の雲」のテーマ曲、、、と枚挙に暇がありません。

サラ・ブライトマンが好きなのにはもうひとつ理由があります。彼女は実際に宇宙へ行こうとしているのです。2年前新聞で、彼女が子どもの時、人類初の月面着陸をテレビで見て以来宇宙に行くのが夢だったことを知りました。あの光景は自分を含め世界中の人が見ていましたし、多くの人が行ってみたいと思ったにちがいありません。ですが、サラのすごいところは、宇宙へ行くための計画を着実に進めているところです。彼女の宇宙旅行は400km上空の宇宙ステーションに10日間滞在して地球の人々に歌を届けるというもの。宇宙と地球を歌でつなぐのです。なんてスケールの大きな試みなのでしょう。

去年公演へ行く直前になって、インターネットで珍しいものを見つけました。公演のVIP TICKET です。サラに挨拶をしてプロのカメラマンに一緒に写真を撮ってもらえるというチケットでした。もちろん入場料とは別です。安い値段とはいえなかったので躊躇しました。その時You Tubeで見たロシアの施設で彼女が宇宙旅行の訓練を受けていた映像が頭をよぎりました。重さが0の世界は、上も下も無くなるということです。無重力(無重量)状態ってどんなのだろう。サラも宇宙船の中を遊泳したり、くるくる回転できるのだろうか。宇宙船の外は真空なんだろうなあ。そんなことを考え始めると、彼女に眼近で会えるということは代えがたい魅力でした。歌姫が宇宙旅行を体験するのです。そこで応援の意味も込めてチケットを購入しました。

公演終了後、サラの登場を待ちます。頭の中でシュミレーションします。英語で簡単な挨拶を考えました。いよいよ彼女が入ってきました。サラは背が高いのです。ヒールのある靴を履いているからだけではありません。舞台映えがするということはそれだけ体格もよいのです。私が伝えたかったことは、通訳の人がすっかり話してくれてしまったので、握手してパシャリと写真を撮ってもらいました。わずか15秒ほどでしたが幸福な時間でした。

その公演のタイトルはDreamchaser(夢追い人)。
夢を見ることは誰でもできますが、夢を追いかけ続け実現してしまう人はなかなかいません。アポロ9号の月面着陸は45年も前のことです。サラはその夢を持ち続けていたのです。彼女は公演プログラムの中で、ハッブル望遠鏡の撮影写真を見て、壮大な宇宙はミクロの世界とつながっていると直感したしたことを述べています。
すべてはつながっている(everything is related.)・・・・・。

一方、ILCはちょうど50年前にコーネル大のTigner博士によって発案されました。それから世界各国で熱心な研究開発が行われ、2004年には主線形加速器に超伝導加速技術を使用することが採択されました。そして2012年にただひとつ発見されていなかった「ヒッグス粒子」らしき粒子がCERNで観測されたのです。この粒子の物理的な性質を詳しく調べることができるのはILCしかありません。

去年の日本学術会議の答申を受けて、今年、文部科学省の下に有識者会議が設置され正式な検討が始まったのは、うれしいニュースです。
ミクロの粒子の解明は、宇宙創成の謎に迫ります。

 

2015年にサラはロシアの宇宙船ソユーズに乗って、国際宇宙ステーションに向かうそうです。
サラの夢もILCもどちらも実現しますように。

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天満 ふさこ

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