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「そうだ、播磨に行こう!」

X線自由電子レーザー(XFEL)プロジェクトの関係で、兵庫県西播磨地区に位置する大型放射光施設Spring-8(Super Photon ring-8GeVの略)に毎月通っている。放射光とは、ほぼ光速で直進する電子が、その進行方向を磁石などによって変えられた際に発生する電磁波で、極めて明るい性質を活かしてタンパク質の結晶構造解析などの生命科学分野を始め、幅広く利用されている。因みに、XFELは文字通りX線とレーザーを組み合わせた光で、従来のX線源より10億倍の明るさで、細かいものをより鮮明に見ることができる。例えば、XFELを用いると細胞を原子レベルまで、生きたまま観察することができるといわれている。

Spring-8の在る播磨科学公園都市は、最寄の相生(あいおい)駅からバスで30分ほど山道を上り、三濃山トンネルを抜けると、山中に忽然と現れる。東京から新幹線とバスを乗り継いで片道5時間。日帰りでも、ちょっとした旅である。この地は四季折々の風景が美しいが、とりわけ山々の新緑萌える春は絶景である。このSpring-8の住所は、「佐用町光都1丁目1番1号」。まばゆいほどに陽光溢れる自然の地で、目には見えない高輝度の人工光をつくり出し、今まで見えなかった極小の世界を見えるようにしてくれる人工都市「光都」。洒落たネーミングは、自然と人工の取り合わせの妙を、一層引き立てている。

さて、Spring-8から足下に望む相生といえば、現IHIの前身の播磨造船所発祥の地として有名な港町。そこから西に10kmほど足を延ばせば、赤穂市。四十七士の討ち入りで名高い忠臣蔵・赤穂浪士の故郷。赤穂城は、映画やテレビで見るほど大きな城ではないが、兵どもが夢の跡に想いを馳せることができる。更に西にもう一足(15kmほど)延ばすと鄙びた風情の港町、日生(ひなせ)に至る。 なぜか、こんな町に(と言っては失礼だが)立派な「BIZEN中南米美術館(旧森下美術館)」が在る。アンデス文化の遺産をはじめ、古代南米の貴重な土器、土偶などを数多く収集した美術館で、日本でも屈指のコレクションは一見の価値あり。外壁には備前焼陶板1万6千枚を使用しているという。 ここ日生港からはフェリーが小豆島までわずか1時間で結んでおり、観光の拠点としても便利である。 今年は春になったら、「そうだ、播磨に行こう!」

 

(馬画人)

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