Columnコラム
がんばれ!「はやぶさ」君
「はやぶさ」と聞いて、鳥のハヤブサを思い浮かべる方は、相当の鳥類マニア。非常に飛翔速度が速く、 時には時速300kmに達することもある急降下速度は現生鳥類最速とされるハヤブサは、自然界では海岸の 岩場などに生息するため、一般人が目にする機会は少ない。中高年の方なら、旧日本陸軍の名機「隼 (正式名称は一式戦闘機)」、或いは東京と鹿児島の間を結ぶ寝台特急として長く親しまれてきた 「はやぶさ」(昨年3月に惜しまれつつ廃止された)を思い浮かべるかもしれない。ここで筆者が応援 するのは、鳥でもなく、列車でもなく、何と地球と惑星の間を往還する探査機。
協議会主催の先端加速器科学技術推進シンポジウム2009 「宇宙の謎に挑む 日本の貢献」でも紹介された、 人類初の小惑星の岩石採取に挑戦した探査機「はやぶさ」は、2003年5月に打ち上げられ、地球と火星の 間の軌道を回る小惑星「イトカワ」に向かい、2度の着陸と離陸を成功させたが、たびたびトラブルに 見舞われ、帰還予定が3年延びていた。更に昨年11月には稼動していた2基のエンジンのうち1基が故障し、 地球への帰還が危ぶまれていたが、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の懸命の努力の結果、1月13日に地球から 約150万キロの地球引力圏の内側を通過する軌道に乗せることに成功した。
1月14日現在、「はやぶさ」の地球までの距離は約5900万キロ。今年3月中旬までイオンエンジンの運転を 続け、より地球に近付ける。今年6月に「はやぶさ」が地球へ帰還できることがほぼ確実になり、採取した 岩石を入れたカプセルが地球へ戻る可能性が高まったとのこと。詳細は、 JAXA の ホームページをご参照下さい。
「はやぶさ」は、約1m×約1.6m×約2mの小さな機体で、地球から約3億Km彼方で小惑星「イトカワ」と ランデブー。その後、満身創痍になりながらも地球に向けて健気に飛び続けている姿を想像すると、自然と 応援したくなる。全国に「はやぶさ」ファンが10万人いるというのも頷ける。がんばれ!「はやぶさ」君。
ところで、地球帰還への頼みの綱のイオンエンジンとは、マイクロ波によって推進剤のキセノンを イオンに電離し、次に生成したイオンを強力な電場で加速、高速で噴射させ、その反動を利用して推進力を 得る仕組み。一種の、そして立派な加速器です。
先端加速器科学技術推進協議会の皆様、シンポジウムに参加頂いた皆様、今年6月に無事帰還するまで、 「はやぶさ」君を応援して下さい。
(馬画人)