Columnコラム
はやぶさ 甦る
去る6月13日深夜、日本の小惑星探査機「はやぶさ」が地球に帰還した。「はやぶさ」の 偉業については、たくさんのメディアで報じられたのでご存知の方が多いと思う。当協議会では、 昨年各地で開催した先端加速器科学技術推進シンポジウム2009『宇宙の謎に挑む 日本の貢献』の 中で、『世界初への挑戦 小惑星探査機「はやぶさ」の旅』と題して、JAXA宇宙航空研究開発機構の 先生方にご紹介頂いたので、「はやぶさ」の快挙は、まさにご同慶の至り、感慨も一入だ。
シンポジウムでは、『見る宇宙、行く宇宙、創る宇宙』を統一テーマとすることが決まったものの、 『行く宇宙』の題材を何にしたらよいかと悩んでいた筆者が、たまたま開いたJAXAのホームページで 目に留まったのが「はやぶさ」の4文字。45年ほど前、筆者がまだ小学生の頃、東京からまる一昼夜を かけて故郷鹿児島まで運んでくれた寝台特急が「はやぶさ」だった。ちょうど、昨年3月に役目を 終えてダイヤから姿を消したところで、妙に郷愁を覚えたからかもしれない。
小惑星探査機「はやぶさ」は、2005年に小惑星「イトカワ」への離着陸に成功したものの、 通信が途絶えて一時行方不明になるなど相次ぐ機体トラブルに見舞われたが、奇跡の復活を 果たして2007年地球への帰還に向けて巡航運転を再開した。ところが、昨年11月4日に頼みの イオンエンジンが停止するという緊急事態が発生した。時あたかも、JAXAの「はやぶさ」 プロジェクトマネージャーの川口淳一郎先生が、博多で開催予定のシンポジウムで講演頂く4日前。 川口先生は、シンポジウム当日11月8日に欧州から帰国後成田から博多に移動する予定を急遽変更し、 はやぶさ運用センターのある相模原に直行された。ご講演を聴けなかったのは残念だったが、 直後に川口先生率いる「はやぶさ」運用チームは、故障した2台のイオンエンジンの正常部品を 接続して1台のエンジンを動かすという裏技で「はやぶさ」を甦らせたから、シンポジウムに 参加頂いた「はやぶさ」ファンの方々にもお許し頂けたのではないか。
「はやぶさ」は、7年にわたる地球~イトカワ往還60億kmの旅を終え、小惑星で何かを 採取したと期待されるカプセルを無事地球に届けるという大役を果たして、2010年6月13日 自らは大気圏再突入で燃え尽きて、姿を消した。けれども、その名「はやぶさ」は、 東北新幹線東京~新青森間を時速300km、3時間余りで結ぶ最速列車の愛称として、 2011年3月再び甦る。
(馬画人)