Columnコラム
“巡り会い”と”巡り合わせ”
春は出会いの季節でもある。学校では新入学や進級で新しい友との出会いが生まれ、会社では人事異動などで新たな人間関係が生まれるこの季節に、人は多くの出会いを経験する。
一体、人は生涯にどれくらいの人間に出会えるのかと計算された方がいる。勿論仮定の話だが、1分間に一人と出会えるとしたら、1時間で60人。1日24時間という訳にはいかないので、睡眠時間などを除いて18時間出会い続けたら、1080人。1年間では、約39万人。生涯80年とすると、約3200万人に出会える計算になるという。それでも、母数を地球の人口の67億人とおけば、わずか0.5%に過ぎない。こう計算された方は、私たちの日々の出会いはまさに一期一会、もはや必然とも言える”巡り会い”なのではないかと、人と人との出会いの大切さを説いておられた。
人に”巡り会い”があるなら、仕事には不思議な”巡り合わせ”があるようだ。自らが望んだ仕事ばかりでなく、命じられるままに携わった仕事でも、事業の大きな節目や組織・体制の大きな変革に遭遇することがある。後から振り返ると、それは人智を超えた天の采配に思えるような出来事であり、”巡り合わせ”は、あたかも人と人との”巡り会い”が織り成す綾のように思われる。
そうして”巡り会い”と”巡り合わせ”は、人と人とを結ぶ”縁(えにし)”を生むのである。2008年6月に本協議会が発足したときに、たまたま(入社以来30年で初めて)加速器の仕事に携わっていた関係で事務局の仕事をお手伝いするようになったのは、私にとっても不思議な”巡り合わせ”である。爾来、協議会活動を続ける間にノーベル物理学賞を受賞された小柴先生や小林先生を始めとする高名な科学者、JAXAの研究者、はたまた放射線治療の権威の先生方など多くの方々に巡り会えた。テレビでしか拝見できないような先生方に直接お目にかかることも、しばしばである。この3年間に巡り会った方々から得られた知識や見識は、それ以前に得たものと較べても遥かに刺激的で興味深いものである。まさに、『”巡り会い”と”巡り合わせ”』がもたらしてくれた”縁(えにし)”の賜物である。
本協議会活動の中核のモデルケースとして、日本での実現を目指す「国際リニアコライダー計画」は、日本や欧米で活動を続けている国際組織のコアメンバーが国の内外を問わず多くの人々を惹きつけ、たくさんの巡り会いを醸成している。その意味では、ILCは今や”International Linear Collider”ならぬ、”International Human-Linkage Community”「人と人を結ぶ国際共同体」(筆者造語)の役割を果たしているのかもしれない。最近筆者は協議会活動から少し離れた身になったが、世界でひとつしか作られない大型線形加速器を日本に誘致しようとする熱き思いがエネルギーとなって、日本中でILCに纏わる無数の『”巡り会い”と”巡り合わせ”』が、たくさんの人々の”縁(えにし)”を結び、夢の実現に結実することを願ってやまない。
馬画人