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秋の夜長に眺める宇宙   高柳 雄一

秋も深まりました。日没後、晴れた夜空に星が出そろう頃になると、夏の夜空を飾った一等星が描く天の大三角も西に傾き、天頂付近は星がまばらに散らばる広がりを見せています。そんな夜空に秋を代表する「ペガスス座」の大きな四辺形を探すのもこの季節らしい夜の楽しみ方です。ひとたびペガススの四辺形が確認できると、寂しい星空もカシオペア王家のギリシャ神話にまつわる星座の世界に変わります。輝きこそ目立ちませんが、星々を結ぶ星座には、エチオペア王家にまつわるケフェウス王とカシオペア女王、そして王女アンドロメダや、海から王女に迫る化けくじら、それを退治した英雄ペルセウスが描かれ、そこには子ども時代に眺めたロマンを秘めた夜空が鮮やかに蘇ります。

秋の夜は星空で星座を探す努力がいつも必要なため、星空を眺めると星座をたどった懐かしい夜をいくつも思い出します。初めての海外旅行で、冬の夜空に「オリオン座」を見つけ、日本と同じ空の下にいることに気づき、ほっとした体験もありました。はじめて北極圏に旅した時、星座をつかって北極星を探し、思いのほか天頂に近い高さで発見した喜び、南半球で見た「オリオン座」の見慣れない姿と動き、いくつもある夜空の思い出には必ずそこでみつけた星座が登場します。

子どもの頃、プラネタリウムの無い場所で育ったせいか、初めて覚えた星座は野外で教わり、星座の本に夢中になって、少しずつ星座を覚えました。しかし、季節毎の星座の世界が全天で繋がりをもった知識となったのは何と言ってもプラネタリウムの世界に触れてからでした。宇宙との結びつきを何時でも感じるため、昼間も夜空を見たいと言う人間の意欲はプラネタリウムで見事に実現したと思います。

星座は人類がプラネタリウムを発明する遥か以前から存在しました。高松塚古墳が発掘され、古墳の天井に星の世界が描かれていたことが話題になった時、私は「古墳の中の星空」というラジオの番組を作ったことがあります。古墳の天井に描かれていた星空には、中国の星座とも言える星宿と呼ばれる星の群れが描かれていました。星宿は西洋の星占いの星座の配置と似たとところも多く、中国では新月から新月まで毎日夜空を移動して行く月の運行を知るために使われました。「オリオン座」の三つ星は参(しん)、「さそり座」のしっぽは尾(び)、「おうし座」の星団「すばる」は昴(ぼう)、「ペガスス座」の大きな四辺形は室(しつ)と壁(へき)、星宿は星座を特徴づける星群を見事に捉えています。

人間は、昔から地上で自分のいる位置、時のめぐりを知るために星空に星座や星宿を描いて利用してきました。古墳の中の星空もプラネタリムの中の星空も、宇宙をみつめた人間が、宇宙に意味をあたえてきた文化や科学など私たち人間の営みを反映しています。宇宙には人間以外に知性を持った生命が存在する可能性も現在高まっています。太陽系外の惑星に住む、知性をもった生命は宇宙にどんな意味をあたえているのでしょうか、思いは果てしなく広がります。秋の夜長に眺める宇宙は、地球に出現して以来、絶えず宇宙に新たな意味を与え続けてきた私たち人間の営みを振り返る機会を与えてくれます。

 

 

高柳 雄一

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