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続 『“巡り会い”と“巡り合わせ”』

以前、このコラムに“巡り会い”と“巡り合わせ”について書いたが、今回はその続きである。人は、生涯80年とすると約3200万人に出会える計算になるが、母数を地球の人口の67億人とおけば、わずか0.5%に過ぎない。私たちの日々の出会いはまさに一期一会、もはや必然とも言える“巡り会い”なのではないかと、人との出会いの大切さを説いた。では、巡り会ったあとは、どうなるのだろうか。何が生まれるのだろうか。

その答えを見出したのは、3月の東日本大震災のあとである。たいていの日本人は、あの大震災を目の当たりにして、傷ついた同胞を助けるために自分に何ができるだろうかと考え、直接行動に移せる人々はボランティアとして現地に赴いた。そこまではできない多くの方も、日本全国から救援物資や義捐金を送り、復興募金に応じた。その額はこれまでになく、莫大な額に上る。人々を駆り立てたのは、同じ日本人として時空を共有することから生まれる、『絆』を感じたからではないだろうか。

『絆』の語源は諸説あるらしいが、犬や馬など動物を繋ぎとめる綱のことを指すことから転じて、家族や友人など人と人を離れ難くしている結びつきを言うようになったとされている。絆という字は、「糸」に「半」と書く。語源が綱だから糸偏はわかるが、旁の半は何を意味するのだろうか。半分が糸だとしたら、残り半分は何で作られるのだろうか。

東日本大震災のあとで絆を感じたことからすれば、残り半分はきっと、離れがたき人を思い遣る熱き「心」なのだと思う。震災から8ヶ月経った今も日本中に東北復興を願う熱き心が充満している。

その東北復興のアイデアとして、日本での実現を目指す「国際リニアコライダー(ILC)計画」を候補地のひとつである岩手県が誘致に名乗りをあげ、復興のシンボルにしようと熱く活動を続けているという。何という巡り合わせだろうか。筆者はひょんなことから加速器の仕事に関わるようになり、今も協議会の活動に少しばかり参画しているが、よもやそのことが震災後の東北復興の手助けになるとは、夢にも思わなかった。阪神淡路大震災を被災した際にたくさんの善意を頂いた筆者が、今度は恩返しする番である。

欧米の経済情勢をみるにつけ、もしかしたら、ILC の『絆』は東北ばかりでなく、国際社会で存在価値が低下する一方の日本そのものを救えるかもしれない。

 

 

馬画人

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