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高校にて   広島大学  高橋 徹

AAAホームページのコラム,しばらく間が空いてしまいました。ご存じの方も多いと思いますが,ILCの実現へ向けた動き,特に日本での実現の機運が高まっています。おかげで,関係者も忙しく動き回っています。広報活動がとても重要なのは重々分かっているつもりなのですが。反省しています(_ _)。

 

さて,そんな慌ただしいなか,高校を訪問して授業をさせていただく機会がありました。広島市にあるその高校。行ってまず驚いたのは,校舎がとてもきれいで,デザインにも凝っていることでした。聞いたところによると,京都駅や札幌ドームなどを手がけた原広司の設計だそうです。こんな高校で学ぶことができたら楽しいでしょうね。生徒さんに案内されて,エスカレーター!で教室へむかいました。

授業は素粒子と宇宙の始まりについてです。生徒さんからの反響をリアルタイムに反映しようと,クリッカーを使っていくつか質問をしながら話を進めました。その様子はこちらをどうぞ

実は,授業の前日に生徒さんからの質問集をいただいていました。素粒子に関することから,学食のメニューまで29項目にわたって,進学を目指す生徒さんの生の声,と言ったところでしょうか?宝物ですね。授業当日もいくつか回答したのですが,とても全部は無理。後日まとめて回答を作って送ることにしていました。でも,授業の翌週から海外出張だったりして,なかなか進まず,今日(2013年7月30日)ようやく回答集をお送りしました。その中からいくつか取り上げてみます。

Qなぜ,この分野を学ぼうと思ったか。
この質問はときどき,聞かれます。小学校の時に湯川秀樹博士の伝記を読んだ,とかもっともらしいことを答えるのですが(嘘ではないです),本当はよく分かりません。どうして素粒子や宇宙に興味をもったのか?他の研究者の皆さん,どうなのでしょう。

Q理学部に進んだ場合の進路は?
これは高校生ならではの質問でしょうか?質問の意味は研究者以外で,ということなのでしょうね。この話,当事者の生徒さんにも大切ですが,実は親御さんがとても気にしているのです。(でもなかなか面と向かっていいだせない?)物理学とか数学とか,実社会で役に立ちそうにもない勉強をしにわざわざ大学に行く娘や息子を見守る親御さん,気になって当然ですね。答える方も即答は難しいです。でも理学での勉強の本質は,物事を観察し,考え,分析する方法を学ぶことです。それはどんな分野でも役立つはずです。それさえできていれば,手に職をつけるのは就職してからでも十分できます。実際理学部の卒業生は公務員,教員,会社員(理系が多いことは間違いないですけど)など,いろいろな職業についています。そうそう,私の研究室を昨年卒業した学生は,音楽関係で働いているようです。

Qこの分野での研究がどのように生かされるか。
やはり,素粒子物理学など基礎研究と実社会との関係は,多くの生徒さんが知りたいことのようです。
素粒子物理の現在の知識がどのように役にたつのか分からないけれど,今の技術の基盤になっているのは100年前の素粒子物理学。
加速器が医療用に広く使われているなど,実験技術の社会への波及は大きい。
という,ある意味模範解答をしました。

Q広島大学でおいしい学食は何ですか。
なんだろう。私は食堂ではいつもうどんなので。でも学内にあるカフェはおすすめ。夏は時々バナナスムージーで休憩です。それにここはサイエンスカフェのために場所を無料で提供してくれているのです。いつも感謝しています。

 

この文章を書いている最中に,授業を聞いてくれた生徒さんからの感想が届きました。皆さん,A4にびっしり書いてくれました。まだじっくり読んでいませんが,私の話を聞いて,素粒子物理学のような基礎物理も社会と関係している(役に立っている)ということが分かったと言う感想がありました。産学連携をめざすAAA広報部会委員の面目躍如,というところでしょうか

高橋 徹
広島大学

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