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ILC 測定器研究、キックオフ会議

過去5年間の日本の ILC 測定器研究開発資金のかなりの部分は、日本学術振興会の研究費によってまかなわれて来ましたが、その研究計画期間は今年の3月に終了しました。それで新しい研究費を獲得しなければならなくなりましたが、これまでの研究費の枠組みが廃止されたために継続で申請することができず、新規で申請することになりました。研究の目的は、新しい測定器概念による最先端の測定器の設計を完成させて、正式な ILC 共同研究グループの形成を主導するというもの。ILC はまだ正式に承認された計画ではないので、かなりの苦戦を強いられましたが、ILC 測定器開発がこの分野全体の技術レベルを底上げして来たという主張をなんとか理解していただけたようで、幸いにして採択されました。それぞれの測定器要素開発や測定器全体設計に関わって来たこのグループのメンバーの皆さんの努力の賜物です。
(http://epx.phys.tohoku.ac.jp/Kickoff2011/)

 

さて、新しい研究計画を心機一転しっかりと発進するために、9月12日から3日間、東北大学においてキックオフ会議を開催することになりました。
(http://epx.phys.tohoku.ac.jp/ilcsuishin/)
国内の科学研究補助金の会議ですから、当初は内輪でこじんまりと行おうとしたのですが、企画委員会で「せっかくだから、国際的にしよう」ということになり、だめもとで、ILC 国際設計チーム(GDE)のディレクターのバリー・バリッシュ、ILC 運営委員会の議長のジョナサン・バガーに加えて二つの ILC 測定器と実験計画組織も欧米の代表にお願いすることにしました。すると最初にバリー・バリッシュから OK が来ました。実は、彼は僕の博士過程のときの指導教官で、それが効いたのかもしれません。そのあとはなだれのように次から次に承諾していただき、ILC 推進を国際的にリードする主要メンバーがほぼそろってしまいました。くわえて鈴木厚人 KEK 機構長は、キックオフ会議に出席するためにその日にある二つの委員会の移動を試みると進言されました。それが可能である事を願っています。ただ、ILC 実験計画部門のリーダーの山田作衛先生はちょうど CERN での委員会に先約があり、出席できないのは残念です。

 

ILC 実現に関して、いま世界は日本に注目し期待しています。ジョナサン・バガーがキックオフ会議に来ると決心するにあたっての理由は「日本に行くことで、日本が ILC にとって重要であるというメッセージを世界に送ることができる」とのこと。ありがたいことで、折しも会議初日の9月12日は中秋の名月、3人ばかりを我が家にお呼びして飯後の茶事を催すことにしました。この季節の正式な茶事では、懐石、初炭、菓子、中立、濃茶、後炭、薄茶と進みますが、飯後の茶事はそこから懐石を省いたもので、茶事のなかでもっとも簡単なものです。戦国時代にはお茶の席でよく同盟関係や戦略などが話し合われたと聞きます。ひょっとしたら今回の茶の湯の席で(実際は英語でしょうが)、
バガー「ILC は日本に作る他にはなきにござらぬか。」
バリッシュ「それがしも斯様に存じ候。」
鈴木「されば、左様に決まり申した。」
なんてことは - ないでしょうね。

 

 

抛執斎

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