Columnコラム

コラム

『日本発宇宙行き』 内閣官房長官 河村建夫

去る7月31日に発足した超党派の「リニアコライダー(先端加速器)国際研究所建設推進議員連盟」は、『日本発宇宙行き』のビジョンのもと、教育、科学技術、エネルギー、外交等の観点から、わが国にリニアコライダー国際研究所を建設することを国家戦略として推進していくことを目的としています。

地球上でビッグバンを再現し、放出される新素粒子をキャッチして宇宙誕生の謎を解明できると考えられているリニアコライダー(ILC)は、全長40kmを超える地下トンネルに設置される超伝導のハイテク大型加速器です。日本は、つくばで稼動する「Bファクトリー加速器」、このほど運用開始された東海村の多目的加速器J-PARC、播磨で建設が進むX線自由電子レーザー施設など多くの大型加速器を有しており、素粒子・宇宙・物質・生命科学・及び産業利用の各分野で世界最先端の研究を進めています。折りしも、南部氏、小林・益川氏のノーベル物理学賞受賞により、素粒子物理の世界における理論と実験の両分野で日本がトップランナーに位置することが、国民の皆様にも広く認められました。

この機をとらえ、日本政府としてもILC計画に本格的に取組む時が来たことを表明し、文部科学省や経済産業省など関係省庁横断の局長級レベルの検討会議を設置することを決定しました。リニアコライダー国際研究所をわが国に建設することは、人類が希求する宇宙の謎の解明と、そのための先端技術を駆使する姿を国民に示すことにより、若者の理科離れを防ぎ、若者の夢や好奇心を涵養する格好の舞台装置を提供することになります。

私は、2003年に文部科学大臣に就任以来、宇宙開発利用を国家戦略として位置付ける必要性を認識し、政治主導による宇宙政策の大転換を計るべく、議員立法による「宇宙基本法」の成立に尽力してまいりました。ねじれ国会の厳しい国会運営の最中においても、国家百年の大計ともいえる「宇宙基本法」は、自民・公明・民主3党の合意を得て本年5月に成立したものです。宇宙開発が、”スペース(space)”への挑戦であれば、リニアコライダーは深遠な宇宙”ユニバース(universe)”への挑戦でもあります。

宇宙科学は、大きく三つの方法により研究が進められます。一つは、探査衛星等で深宇宙へ「行く」。二つ目は、望遠レンズなどを通して「見る」。三つ目が、地上の加速器などを使って、ビッグバンの状態を「創る」。ILCは、この三つ目の方法で宇宙の起源を探ることになります。

素粒子物理の世界は、宗派、民族・国境・イデオロギーを超えた基礎科学分野であり、新しいわが国の基礎科学研究を象徴する『日本発宇宙行き』のビジョンを実現する絶好の舞台です。

わが国の新しい国家戦略として位置付ける「リニアコライダー(先端加速器)国際研究所建設推進」に向けて、政・産・官・学連携の要となる先端加速器科学技術推進協議会の活動に大いに期待しています。

Download