Columnコラム
スペイン&日本 核融合・加速器の技術開発およびプロジェクト協力強化ワークショップ
2016年5月13日駐日スペイン大使館にて,スペイン貿易省, INEUSTAR (スペイン科学産業協議会)主催,先端加速器科学技術推進協議会,量子科学技術研究開発機構,IFIC (スペイン粒子物理研究所),INDUCIENCIA (スペイン科学産業技術プラットフォーム),CIEMAT(スペインエネルギー・環境・科学技術研究センター)の共催で「スペイン&日本 核融合・加速器の技術開発およびプロジェクト協力強化ワークショップ」が開催されました。
このワークショップは,日本とスペインの加速器科学,核融合科学に関係する企業の相互理解と連携の強化を目的として開催されました。そもそも5月30日から6月5日まで,スペインのサンタンデール市で開催されるECFA LC 2016(欧州リニアコライダーワークショップ)で,産業科学セッションを行うということで話が始まったのですが,スペインの関係者から5月13日に東京のスペイン大使館でワークショップ開催したいという提案があり,会員の皆様に参加を呼びかけました。準備期間が短かったのですが,日本の企業,研究者合わせて約70名,スペインからも20名くらいの出席がありました。スペイン側も日本からこんなに沢山の出席があるとは思っていなかったようで,とても感謝されました。お集まり頂いた皆様には重ねてお礼申し上げます。
駐日スペイン大使館は六本木の真ん中にあり,内装も明るく瀟洒なつくりです。普段このような場所にあまり出入りしない私には,居るだけで楽しくなる空間でした。ワークショップは,スペイン大使のゴンサロ・デ・ベニート閣下のご挨拶から始まりました。その後,この会のスペイン側の中心人物である,INEUSTARディレクターのハビエル・カセレス氏 とCIEMATの マリオ・ペレス氏からスペインの科学産業,加速器科学や核融合に関する大型プロジェクトの紹介がありました。日本からは,松岡雅則AAA事務局長による日本の産業と科学の紹介,ILCについては,山下了東大特任教授と鈴木厚人岩手県立大学長からILCの科学や計画の状況,ILC産業についてお話がありました。また,量子科学技術研究開発機構那珂核融合研究所副所長の石田真一氏から核融合研究の紹介がありました。ILCとITERは大型プロジェクトの典型ともいえるプロジェクトですが,今回のように産学連携をテーマとした会合に双方が出席したのは初めてではないでしょうか。今後の進展に繋がる契機になったと思います。ワークショップの後半は,スペインから出席した企業がそれぞれの得意分野や製品,技術の説明をしました。どの会社も一般論ではなく,具体的な技術やプロジェクトへの寄与を強く全面に出したプレゼンテーションで,出席していたAAA会員にとっても協力関係構築のヒントとなる内容だったと思います。
ワークショップ最後には,AAAとINEUSTARの間で,緊密な情報交換と連携強化に向けた覚え書きの締結が行われ,AAAの西岡喬会長とINEUSTARのハビエル・カセレス氏が署名を行いました。
(ハビエル・カセレス氏のフルネームはFrancisco Javier Caceres Nuñez(フランシスコ ハビエル カセレス ニューネス)とおっしゃいます。Javier(ハビエル)はXavier(ザビエル)に由来します。)
今回のワークショップは国を超えた産学の連携として,AAAにとって初めてのものとなりました。核融合科学と加速器科学を交えたワークショップとしても有意義な会であったと思います。講演後の懇親会では,日本とスペインの企業,研究者の間で活発な情報交換がなされていました。これが今回の主目的だといっても過言ではないと思います。またスペイン大使館で開催されたということは,ILCプロジェクトにとっても意義あるものでした。今後,この動きが日本―スペインから,欧州,米国へと広がって行くとよいと考えています。
最初にも書きましたが,ECFA2016でも産業セッションを開きます。6月1日午後の予定です。今回のワークショップの第2回という位置づけで,多くのスペイン企業の出席を期待しています。日本から出席される企業の方向けに,6月1日の午前にサンタンデール市近郊の企業の見学を計画しています。またセッションの後,6月3日にはスイスのCERN研究所の見学も企画しております。目前に迫っておりますし,遠路ではありますが,AAA会員企業皆様には出席をご検討いただければ幸甚です。
広島大学 高橋 徹 先端加速器科学技術推進協議会 広報部会副部会長