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ビックスを解剖する

LHCとILCの違い

ヨーロッパで動いているLHC加速器と、ILCの加速器は両方ともヒッグスを調べるための加速器だけど、実は大きな役割の違いがあります。

LHCとILCの違い

LHCは陽子を使った巨大な円形加速器です。

円形加速で質量の小さい電子や陽電子を使うと曲げる時に大きなエネルギーロスが発生してしまうため、重く効率の良い陽子を使います。重い陽子を使うとエネルギーロスは少ないけど、曲げるのに非常に大きな電磁石が必要になります。だからLHCはあれだけ巨大な施設なのです。
陽子を使う長所は重いのでどんどんエネルギーを注ぎ込みやすいことです。より高いエネルギーの衝突反応を見ることが比較的容易です。

LHCは大きな衝突エネルギーを、今までにみたことのない粒子を作ってみるのに適した加速器なのです。

粒子を衝突させた実験の結果

ILCは電子・陽電子を使った直線30kmの加速器です。

一番の特徴は電子と陽電子を使うことです。電子陽電子の場合は、曲げると放射光をたくさん出してしまうので、できるだけ曲げずに使いたい。そのため、30kmもの直線で構成する加速器を想定します。電子・陽電子の最大の特徴は電子や陽電子の中身がないので、衝突したときに余分な反応がおきず、ノイズが少ないことです。陽子同士の衝突の場合は、陽子の中の1対の中身がない素粒子同士がぶつかるとそれ以外の陽子の中身の莫大な数の素粒子も一緒に飛び散ります。これがノイズとなり、その衝突の中心が見えづらくなってしまうのです。

ILCの場合は加速された電子と陽電子は中身がないので、衝突すると対消滅してエネルギーに変わってしまいます。物質が一度無くなってしまい、純粋なエネルギーからもう一度物質が生まれるということがおきるので、周りのノイズが全くない美しい反応を見ることができるのです。

そのため、LHCでは見ることができなかった「ヒッグス粒子」と「ヒッグス場」の詳しい特性を詳しく知ることができると考えられています。

ILCはピンポイントで徹底的に詳しく調べることができる加速器なのです。

粒子を衝突させた実験の結果の予想図
ヒックスくん

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