ILC PROJECT [ 国際リニアコライダー計画 ]

最新情報

2017年01月01日

国内議論と並行し外交戦略 岩手県選出のILC議連幹部2氏に聞く

胆江日日新聞

超党派国会議員で結成するリニアコライダー国際研究所建設推進議員連盟(会長・河村建夫衆院議員)の鈴木俊一副会長(63)=衆院岩手2区・自民=と、階猛幹事(50)=衆院岩手1区・民進=は、胆江日日新聞社の取材に応じ、ILCをめぐる動向や考えについて語った。両氏は、世界的に高まりつつある自国優先主義の風潮や、巨額コストに対する懸念を解消するためにも、国内外問わず積極的な取り組みが必要との認識で一致。鈴木氏は「政府判断が下されるここ2年が勝負どころ」、階氏は「地元の熱意が全国的な認知度の広がりにつながっていく」と強調している。

【“外堀”埋める作戦】
文部科学省のILC有識者会議が見解を取りまとめ、政府が誘致判断を下すのは2017~2018年度と見込まれる。
有識者会議での議論が進む中、議連ではアメリカなど主要国議会との関係構築を推進。同時並行的に外堀を埋めることで、日本政府が抱く懸念材料を少しでも減らし、いつ「ゴーサイン」が出てもすぐに対応できるようにする作戦だ。
鈴木氏は「日本では昔から『自分たちの中で物事を決めてから、相手に打診する』という風潮がある。同じような調子でやっていたら時間ばかり過ぎ、海外から見れば非常にじれったくて待っていられない」と説明する。
昨年2月、鈴木氏ら日本の誘致関係者が訪米し、両国の議会レベルによる連携を確認。これがきっかけとなり、同5月には日米政府間の協議の場が設けられた。
米国での下地が築かれると、ヨーロッパにも同様の働きかけをした。階氏は昨年10月31日、フランスで開催された放射線技術に関する国際会議「2016 IEEE NSS・MIC」に出席。招待講演に臨み、ILC計画に対する協力を呼び掛けた。
「計画の意義については理解いただいたと思う」と階氏。「ヨーロッパでもさまざまなプロジェクトがあり、ILCにどれだけ予算を割けるかといった意見があるようにも感じたが、日本はLHCやITERといった、ヨーロッパが拠点の国際研究に協力してきた。ギブ&テイクの考えに基づき、協力してほしい」と願う。
日米欧の連携構築を着実に進める中、自国優先主義の風潮が高まりつつある。議連が真っ先に働き掛けを行ったアメリカでは、「アメリカ・ファースト」を掲げる共和党のドナルド・トランプ氏が、次期大統領に就任する見通しだ。鈴木氏は「心配が全くないわけではないが、とにかく今までの関係が継続できるようにしたい」。階氏は「アメリカ自体も財政が厳しく、国際的な研究開発にどれだけ目を向けてくれるか。ILCで得られた成果は、アメリカの産業界にとってもプラスになると呼び掛け、積極的な参加を求めたい」と語る。

【国内での理解形成】
東日本大震災から5年の節目となった昨年3月11日、仙台市内で開かれたシンポジウムの席上、当時の復興庁事務次官がILC計画を「金食い虫」と表現。後日の報道を受け、階氏は衆院の大震災復興特別委で「万感の怒りを込めて、この次官の物言いには我慢ならない」と批判した。高木毅復興相(当時)は「不適切な発言であった」と陳謝した。
当初計画期間の総額で1兆円超と言われるコスト。過去の国際プロジェクトの事例をみると、半分は建設国(ホスト国)が負担し、残りを参加国で分担するのが一般的だ。「よくよく分析してみると、ILCは決してべらぼうに高い負担を日本が背負うものではないと感じる。その辺をわれわれもしっかり訴えなければいけない」(階氏)
鈴木氏も「数字が独り歩きし『こんな金額つぎ込めるか』『他分野の研究予算が無くなる』との批判につながってはよろしくない。もちろん、日本の負担が5000億円に収まればそれでいいという話ではない。可能な限りのコストダウンをして、精査する作業は欠かせない。この辺についても、日米欧の協議において検討していくことになるだろう」
国際研究者組織リニアコライダー・コラボレーション最高責任者のリン・エバンス氏=ロンドン・インペリアルカレッジ教授=は、昨年12月に盛岡市で開かれた国際会議「LCWS2016」で、施設の段階的建設によってコスト削減を図るアイデアを披露している。

【効果の提示が大切】
コストに見合うだけの効果をどれだけアピールできるかも重要だ。
鈴木氏は「お金の損得に限らず、地場の中小企業育成や教育文化の振興もメリットに含まれる。同じ国際協力事業でも、国際宇宙ステーションは宇宙飛行士にならない限り、現場を直接見て感じることはできない。しかし、ILCは身近な場所に建設され、そこで研究している人たちと直接対話もできる。次世代の育成には、非常に有意義な施設だ」と力説する。
予算面への影響を懸念している他の学術分野への波及効果も、もっと示していく必要がある。「がん治療の新技術や核種変換技術もその一例だ。特に放射性物質の半減期を短縮させる核種変換技術は、福島第一原発事故への対応にも大きく関係してくる」(鈴木氏)
階氏は、岩手にとって大きな課題である「人口減」への効果を期待する。「少子化による自然減、都市部流出による社会減の『ダブル減』が起きている。これを食い止めるには、若い人たちが地元に希望を持てるプロジェクトが必要だ。自分たちもILCに加わり、能力を高めたいという思いが岩手のためになるし、人口減の歯止めにもつながるだろう。人口減に悩む岩手だからこそ、ILC誘致をやらなくてはいけない」

【国民周知の方法】
研究者、政界、経済産業界、そして候補地の地元。それぞれにILC誘致を見据えた動きを展開しているが、現実問題としてILC計画の存在が広く知れ渡っているわけではない。本紙を含む地元メディアでは大々的に取り上げられても、全国的な広がりは乏しい。
このことについて階氏は「ニュースでよく取り上げられる東京オリンピックやリニア新幹線が、最初から『オールジャパン』の雰囲気でやってきたかというと、必ずしもそうでもない。今は確かに東北以外の人たちからすれば、自分たちには関係ないという雰囲気が強いかもしれないが、地元から『やろう!』という熱意を示すことで、他地域にだんだんと広がっていくのでは」とみる。
鈴木氏は、ノーベル賞の話題と結び付けるのも一手法だと語る。「毎年のように日本人が受賞しており、そのたびに受賞者の皆さんは『基礎的研究の大切さ』を訴える。もしこの先、基礎科学のネタが尽きてしまえば、科学分野での日本人受賞は遠のいてしまうかもしれない。そうならないようにするためのいわば代表選手がILC計画だ」
さらに鈴木氏は、気持ちの面だけでなく目に見える対応でのオールジャパン体制構築が検討されていることを明かした。国内候補地の最終選定に残った脊振山地がある九州に、ILCのデータ解析センターのよう関連機能を設置する案だ。「北上山地だけでなく、日本各地にILC関連機能を持たせるのは、一つのいいアイデア。オールジャパンでやっていく姿勢を崩してはいけない」

【地元がやるべきこと】
政府判断を待ちわびる研究者や候補地の地元関係者。鈴木氏は「地元の皆さんからもILC実現に関する陳情をたくさん受けている。いずれ、ここ2年のうちに政府判断の時期が来る。そういう状況下なので、例えばILCだけに特化した国政要望があってもいいのでは。それくらいの強い意気込みをぜひ示してほしい」と語る。
階氏は「自分もそうだが、他の文化や地域の人たちと交わるまでに時間が掛かるという人が少なくない。しかし、ILCによるメリットを得るには、そのような壁を乗り越えなければいけない。ILCが来ると、国際研究都市が形成され、海外からも多くの人たちがやって来る。岩手県は現在、台湾など海外からのインバウンド観光に力を入れているようだが、こうした取り組みを通じて日ごろから外国人との交流を深めてほしい。その経験は、ILCが来た時に役立つはずだ」と、地域の取り組みに期待を寄せている。