ILC PROJECT [ 国際リニアコライダー計画 ]

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2016年02月13日

重力波観測成功 巨大ブラックホール生成の謎に迫る成果(国立天文台・本間氏)

胆江日日新聞

米国のカリフォルニア工科大学、マサチューセッツ工科大学などを中心とした国際研究チームが、重力波を世界で初めて観測した話題は世界中を駆け巡った。今回の観測は、二つのブラックホールの合体からもたらされたもの。ブラックホールの国際研究チームに所属する国立天文台水沢VLBI観測所の本間希樹所長は、「巨大ブラックホールがどのようにしてできたかなどを検証する上でも非常に大きな成果。物理学的にも天文学的にも意義がある」と強い関心を示している。
(児玉直人)

重力波とは、質量を持った物体が動いた際、周囲の空間や時間に生じた「ゆがみ」がさざ波のように伝わる現象。物理学者アルベルト・アインシュタイン(1879~1955)がちょうど100年前の1916年、一般相対性理論によって予測していた。
理論上、地球や月、太陽など身近な天体のほか、人や車など全ての物質が「動く」と重力波が生じる。しかし、あまりにも微小な現象であるため、身近な物体や天体で直接観測することはできない。質量が大きい天体の合体や爆発など大規模な現象で「観測できるかどうか――」というレベルだが、これまでに成功例はなかった。裏付けを目指そうとしていた研究者の間では「アインシュタインの最後の宿題」とも言われていた。
昨年9月、米国西部のワシントン州と南部のルイジアナ州に設置している巨大観測施設「LIGO(レーザー干渉計型重力波観測所)」が検出に成功。今月11日(日本時間12日未明)に正式発表した。
LIGOが捉えた重力波は、太陽の29倍と36倍の質量を持つ二つのブラックホールが合体する過程で生じたもの。ブラックホールの研究を続けている水沢観測所の本間所長は、「重力波の存在の裏付けができた。物理学の分野でも金字塔ともいえるし、天文学の分野からみてもこれから先が面白くなる」と話す。
本間所長が研究対象としているのは、今回の観察で得られた重力波の発生源とみられる二つのブラックホールよりも、はるかに大きな質量を持つ「巨大ブラックホール」。太陽の数百万から数億倍という桁外れの質量を持つ天体が、そもそもなぜ宇宙空間に存在しているのかも分かっていないという。
「シナリオの一つとして、ブラックホール同士がくっつき大きくなるという説もあった。今回の観測で得られた成果は、巨大ブラックホールが生成される謎の解明にもつながっていくだろう」と期待を寄せる。
さらに本間所長は、過去に予想された理論が100年の月日を経て証明された今回の研究スケールを踏まえ「学術研究は非常に息の長いものであると感じた。発表された論文を見ても、解明のために非常に多くの人たちが携わっていることが分かる」と強調。北上山地が有力候補地となっている国際リニアコライダー(ILC)がもたらす成果や実現後の社会を想像する上でも「今回の出来事は、科学プロジェクトの在り方を知る上でもいい例」と話している。
重力波観測事業は日本国内でも進行中。昨年ノーベル物理学賞を受賞した梶田隆章教授が所長を務める東京大学宇宙線研究所の主導で、国立天文台、高エネルギー加速器研究機構(KEK)が、岐阜県の神岡鉱山跡地内に観測装置「KAGRA」を建設しており、来月にも試運転が始まる。