ILC PROJECT [ 国際リニアコライダー計画 ]

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2015年03月01日

復興の地 人と科学育む 今春退任する高エネ研機構長 鈴木 厚人さん

東京新聞

 素粒子や原子核、宇宙の成り立ちなどについて研究する高エネルギー加速器研究機構(高エネ研、つくば市)。その機構長を二〇〇六年度から務め、任 期満了に伴い三月末で退任する。四月からは岩手県立大の学長として、人材育成や大型加速器「国際リニアコライダー(ILC)」の国内誘致の実現に力を注 ぐ。

 在任中の二〇〇八年には小林誠氏(現・高エネ研特別栄誉教授)が、益川敏英氏とともにノーベル物理学賞を受賞。両氏が唱えた理論を証明したのは高 エネ研の加速器で行われた実験だった。一三年にノーベル物理学賞を受賞したピーター・ヒッグス氏らが唱えた「ヒッグス粒子」の存在を発見した国際実験チー ムにも、高エネ研の研究者が参加。一四年には高エネ研と欧州合同原子核研究所(CERN)が、互いに「分室」を設けることで合意するなど、国際的な協力態 勢づくりにも力を入れた。

 一方で、一三年五月には日本原子力研究開発機構(原子力機構)と共同で運営する加速器施設「J-PARC」(東海村)で放射性物質漏えい事故が発 生。「慣れというものが、安全に対して少しずつ悪い方向に出ているような気もしている。せっかくいい成果を出してきたのだから、初心に立ち戻り、もう一回 気を引き締め、今回のトラブル(の教訓)を無駄にしないようにしなければならない」と厳しい表情で振り返る。

 かつて東北大に在籍していたことなどから東北地方とは縁が深く、知人も多い。東日本大震災の発生からもうすぐ四年。「岩手県立大は地元との関係が密接。地域の文化をつくり、(人材育成を通じて)新しい岩手をつくりたい」と新天地への意欲を語る。

 岩手県などの北上山地は、ILCを国内で建設する場合の候補地とされている。「(ILC誘致の実現化は)まだまだ進んでいないところがあり、何らかの貢献をしたい」という思いも学長への就任を後押しした。

 各国で分担する見通しのILCの費用は、加速器の建設費だけでも八千三百億円に上るとされる。「たくさんのお金を使うのだから、多くの人が賛成し なければできない」としつつ、「特に社会貢献や人材育成に大きな効果がある。ILCがいかに重要であるかを主張していきたい」。世界各国の研究者らが集ま り、国際協力を象徴するような研究施設が東北に誕生することを願っている。

機構長に就任する以前にもつくば市内で暮らしていたことがあり、市内での生活歴は計二十年余りに。リフレッシュを兼ねて洞峰公園のプールで泳ぐこともあった。「静かで、空気がきれいで東京にも近い。つくばは過ごしやすかった」。春からは盛岡市内で暮らす。