ILC PROJECT [ 国際リニアコライダー計画 ]

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2014年01月01日

岩手に世界がくる日/ふるさとで暮らし、夢をかなえたい…

胆江日日新聞

「大人になっても私は地元に暮らしたい。でも、自分がやりたいことの夢もかなえたい。ILCは両方の願いをかなえてくれるかも」。奥州市水沢区羽田町に 住む及川瑞歩さん(12)は科学、とりわけ天文学に興味を寄せる小学6年生。北上山地が候補地となっている素粒子実験施設・ILC(国際リニアコライ ダー)は、子どもたちの夢をどう現実のものにしてくれるのだろうか。
(児玉直人)

 瑞歩さんが通う奥州市立羽田小学校に昨年10月、独マインツ大学の斎藤武彦教授が訪れ、宇宙の謎やILCに関した授業をしてくれた。「世界にたった一つの施設が、自分の身近な場所に来るなんて信じられなかった」と目を輝かせる。
5年生のころ、太陽系準惑星・冥王星の第1衛星「カロン」の名が付いた楽曲を聴いた。そのとき、冥王星が太陽系の惑星から外された理由など、宇宙に関する 疑問が次々とわいてきた。気が付いたら、いろいろ独自に調べ関心はさらに深まっていった。その探求心はやがて「物質は何でできているのか」という、原子や 素粒子の世界にも入り込み始めている。
将来の夢は科学者。だが「どんな仕事に就いても困らないよう、今の自分がやるべき勉強をしっかりやります」ときっぱり。
ILCは科学者だけが活躍する場ではない。装置の開発やメンテナンスを行うエンジニアも多数滞在。外国人研究者とその家族の生活を支援する事務職員や保 育・教育スタッフなどは、外国語の能力を生かすことになる。キャンパスのレストランで、多くの人を喜ばせるコックもいるだろう。想定される職種は実に多様 だ。
大都会や海外に飛び出さなくても、岩手に世界がやってくる。それがILCだ。
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子どもたちへ 気軽に議論し合おう(ILC計画最前線に立つ山本均さん)
 東北大学大学院教授の山本均さんは少年時代、鉄腕アトムや天文学に興味を持ち、科学者を志した。国際研究者組織「リニアコライダーコラボレーション(LCC)」の物理・測定器部門代表として、ILC計画の最前線に立つ日本人の一人だ。
「物理って、当たり前のこととか、単純な疑問をやたら難しく研究しているように見えるでしょうね。私たちの研究成果は、根本的な人間の知識であり将来永劫 変わることはない。それを見つけることに価値があり、こうした研究に対し多くの国は誇りを持ち、出資をしてくれるのです」
山本さんは、ILCに携わるかもしれない子どもたちに対して「おかしいと思ったことは『おかしい』と伝える姿勢を持って」と訴える。
「もちろん、相手が傷つくことをずけずけ言う、非難するということではないです。自分や相手の意見を気軽に言ったり聞いたりする雰囲気が大事です。それが 無ければ物事の進展や成長はない。学校でもそういうやりとりをしてほしい。友だちに対しても先生に対してもね」。子どもだけでなく、大人の社会にも相通じ ることかもしれない。

やまもと・ひとし 大阪市出身。京都大学理学部卒業後、米カリフォルニア工科大学大学院で博士号取得。ハワイ大学教授などを経て10年前から東北大大学院教授。東北大赴任直後から茶道を習い始め、表千家講師の資格を取得。仙台市在住。58歳。

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沿岸にも貢献できる姿を(ドイツ・マインツ大学教授・斎藤武彦さん)
 ILCは岩手の未来を担う子どもたちに、大きな影響を与えます。研究に携わる世界中の専門家から直接学べるような環境ができますから、岩手の科学教育は世界トップレベルになるでしょう。
ただ、現状をみると沿岸と内陸とではILCに対する温度差があるように思えます。沿岸の子どもたちの教育や地域経済に貢献できる形にすることも大切です。
沿岸の子どもたちも含め、科学の専門知識を学べる大学の理学部のような教育施設が必要だと思います。岩手で育ち、学び、学位を取った研究者が、ILCでノーベル賞を取った――となれば素敵なことです。
何らかの災害を受けた地域が「世界トップレベルの域に達するような復興を遂げた」という例はあまり聞きません。ひょっとしたら、ILCの実現で岩手で起きる発展は、世界初の事例になるかもしれません。
2014年が岩手にとってさらなる素晴らしい前進の年になることをドイツの地から応援しています。

さいとう・たけひこ
神奈川県茅ケ崎市出身。筑波大学大学院を経て、2001年にドイツへ移住。専門は原子核構造物理学。42歳。