ILC PROJECT [ 国際リニアコライダー計画 ]

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2014年01月05日

ILC産業参入/ベンチャーの志で挑もう

河北新報

国際研究拠点建設に際して何ができるのか。岩手県南部と宮城県北部にまたがる北上山地が候補地に決まった超大型加速器「国際リニアコライダー(ILC)」について、東北の地元企業や起業家は今こそ、あらゆる可能性を模索してほしい。
ILCは電子と陽電子をほぼ光速まで加速して衝突させ、大爆発(ビッグバン)直後を再現し、宇宙の始まりを探る。
建設費は約8300億円に上る。加速器本体をはじめ、電子と陽電子の衝突で発生する素粒子の検出器、地下100メートルに加速器を設置するためのトンネル掘削など、さまざまな技術が結集して完成する。
国内外の大手が中心を担う可能性はあるが、東北の企業にも参入余地は十分にある。
加速器関連では既に実績を挙げている。国内の中核的な研究拠点、高エネルギー加速器研究機構(KEK、茨城県つくば市)の施設ではNECトーキンの磁石が使われている。
従業員約30人の工藤電機(仙台市)が開発・製造する電源装置は、理化学研究所の放射光施設「スプリング8」(兵庫県佐用町)をはじめ国内外で導入されている。
参入の可能性はこうした狭い意味での「加速器産業」にとどまらない。関連装置の溶接や土台設置など地元が担える分野は数多くある。
加えて最先端となるILCにはこれまでにない発想が求められる。
施設の稼働には発電所1基分とも言われる電力が必要になる。いかに消費電力を減らせるか、化石燃料などへの依存度を下げられるか。省エネ技術の開発や木質バイオマス発電など再生可能エネルギーの導入が欠かせなくなるだろう。
ILCは新産業創出の核にもなり得る。KEK名誉教授で東北大・岩手大客員教授の吉岡正和氏は米国のシリコンバレーを引き合いに「ILCを核にしたシリコンヒルズを目指すべきだ」と訴える。
東北の企業も徐々に動きだしている。宮城県内では20社・団体でつくる「K-プロジェクト(ILC)研究会」が参入できる分野の検討を始めた。
東日本大震災で甚大な被害を受けた気仙沼市では、溶接技術を持つ造船会社などによる気仙沼造船団地協同組合が関心を示す。木戸浦健歓代表理事は「新しい東北をつくるという視点で参加したい」と漁業の枠にとらわれずに挑む覚悟だ。
岩手県は今年、県内企業によるKEK視察会を実施する方向。東北経済連合会の事業化支援組織、東経連ビジネスセンターは加速器関連に携わる企業の情報収集を進めている。こうした取り組みを通じ、異分野や起業家を含む幅広い企業の意欲をもっと喚起してほしい。
吉岡氏は「ILCから新産業が生まれるのではなく、ILCを核に新産業を生み出す姿勢が必要。問われるのはスピリットだ」と語る。ベンチャーの志は東北の未来を切り開く。