ILC PROJECT [ 国際リニアコライダー計画 ]

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2013年10月10日

ヒッグスの次はあるのか

日本経済新聞

 ヒッグス粒子の存在を予測した英国とベルギーの2人の学者がノーベル物理学賞を受賞した。日本の科学者や企業の技術が、この未知の素粒子の発見を支えた。日本にとってもうれしい受賞だ。

 ヒッグス粒子はあらゆる物質に質量を与える源となる素粒子とされる。宇宙や人間が現在のような姿で存在するのもヒッグス粒子があってこそだとされ、「神の素粒子」の別名もある。

 受賞者である英国のピーター・ヒッグス博士らが粒子の存在を理論的に示したのは約半世紀前。裏付けが難しく、昨年ようやく欧州合同原子核研究機関(スイス)の巨大な加速器を使った実験で確認、今回の受賞となった。

 実験には日本の科学者約100人が参加し「世紀の大発見」に貢献した。また超電導電線やセンサーなど加速器の心臓部には日本企業の製品が採用された。日本の技術者は誇りに思っていいだろう。

 今回の発見で物理学の根幹をなす理論が完成したとされる。めざましい発展を遂げてきた素粒子物理学はひとつの到達点に至った。

 ヒッグスの次の大発見はあるのだろうか。物理学者は「ある」と答える。宇宙で正体不明の「暗黒物質」が見つかり新たな未知の素粒子群の存在が指摘される。調べるほど新たなナゾが生まれ、探求に終わりはないとする。

 ただ物理学者の好奇心の赴くまま実験を大型化するのは、もはや限界に近い。例えば、ヒッグス粒子の次を狙う大型加速器(リニアコライダー)を岩手県に誘致する構想があるが、建設に約8千億円かかるという。素粒子の探索は今や巨大な公共事業でもある。

 もちろん、素粒子の発見が人類に豊かさをもたらす起爆剤になる可能性は否定できない。19世紀末に電子を発見した時に、電子を利用したテレビや携帯電話の誕生を見通せた人はいなかっただろう。

 未来の夢や探求心は大切だ。同時に費用と便益を冷静にはじく、そろばん勘定も大事だ。ともにヒッグス後の物理学に求められる。