ILC PROJECT [ 国際リニアコライダー計画 ]

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2013年09月24日

夢見るまち:TSUKUBA50年 第1部/10止 まちおこし 「知的生産活動」を核に /茨城

毎日新聞

 ◇後世の人が潤う都市づくり

8月23日、日米欧の共同プロジェクト、超大型加速器「国際リニアコライダー」(ILC)の建設候補地 に、岩手・宮城両県にまたがる北上山地が選ばれた。地元自治体は歓喜に沸き、東北ILC推進協議会会長を務める里見進・東北大学長は「受け入れのため、必要な準備を進める」と、さっそく表明した。

建設費が8300億円と巨額なため、日本政府は誘致表明に二の足を踏んでいる。逆に候補地側は前のめり。4・3兆円と見込まれる経済波及効果を期待してのことだ。国内外の研究者を集めて「国際研究都市」を生み出したいという、願望が強い。

国費投入による新都市建設という発想は、筑波と同じ。この点についてつくば科学万博記念財団の木阪崇司理事長は「筑波研究学園都市は日本に、『科学技術』というキーワードを含めてまちおこしを考える時代をもたらした」と指摘する。

高度成長時代、まちおこしといえば工場誘致が一般的だった。工場の雇用と、外から訪れる人が落とす金で地域を潤そうという発想だ。しかし、日本のものづくり産業もかつてのような優位を保っていない。国際競争に敗れた企業が撤退し、衰退したまちも数多い。

「だから今、『ものの生産活動』でなく『知的生産活動』を核にしたまちづくりの重要性が、再認識され始めている」

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広島大学の統合移転でできた賀茂学園都市▽関西財界が中核となって整備された関西文化学術研究都市……。日本各地に筑波をモデルにしたまちが数多く生まれている。景気悪化もあり、必ずしも順調に発展していないが、筑波研究学園も、かつては同じだった。

「おおむね完成」と言われた1980年当時でさえ、職場と住居以外の施設はほとんどなく、生活に潤いが ないことが原因の自殺が相次ぐ「筑波症候群」が全国的な話題を集めた。「人工都市は失敗」ともささやかれた。ところが今、豊富な緑と都市が融合する風景を 好んで、筑波に移り住む人も増えている。

都市が機能するようになるには、長い年月が必要と言える。

木阪氏は「筑波だってまだ道半ば」と話す。「研究機関が移転しておしまいじゃなく、いかに機能的に発展させて、新しい芽を出せるかが大事だ」

かつて県企画部長として筑波整備に携わった三井康寿・政策研究大学院大学客員教授も次のように提言する。

「これからは、今だけ良ければいいという考えでなく、100年、200年を持たせる、後世の人を潤わせるまちづくりをすべきだ。伝統的な家屋を併存した都市が望ましい」

科学のまちだけではない筑波−−。それが求められている。=第1部おわり(この連載は相良美成、松本尚也が担当しました)