ILC PROJECT [ 国際リニアコライダー計画 ]

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2012年11月27日

岩手日報:風土計

岩手日報

宮沢賢治の童話「楢(なら)ノ木大学士の野宿」は、大学士が宝石を探して山々を歩き回る。途中で石のかけらを拾うが「ふん、ここも角閃花崗岩(かくせんかこうがん)」と興味なさそうだ

▼大学士には珍しくもなかった岩手の花崗岩帯が脚光を浴びている。北上山地の地下を北北西から南南東に走る長大な花崗岩の岩盤が、超大型加速器・国際リニアコライダー(ILC)の候補になっているためだ

▼来月から地質調査に入る東北大大学院の佐貫智行准教授が「頬ずりしたくなるほど素晴らしい」岩盤と言うから、期待せずにいられない。硬く安定し50キロもの直線トンネルを通せる。楢ノ木大学士が現代の科学者なら「ふん」と無視できないだろう

▼地下に宝石が眠る北上山地は今、散り際の枯れ葉で暖色に染まった。なだらかな山容は人を穏やかにさせる。下りの新幹線で古里に帰ってきたと実感するのは、北上や奥羽の山並みを車窓に見るときだ。これも岩手の財産に違いない

▼瀬戸内寂聴さんは、かつて二戸市・天台寺での法話で岩手の山々の優しいたたずまいをたたえていた。先人は長く山の恵みと共に生き、世界に先駆けて平泉という非戦の都を打ち立てた。この地域は国際都市にふさわしい

▼優しい山々の懐に抱かれたILCの先端研究都市ができる日を思う。それは、夢物語ではないところまできている。