ILC PROJECT [ 国際リニアコライダー計画 ]

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2012年11月23日

ヒッグス粒子の先には何があるか?

日経サイエンス

万物に質量を与えるヒッグス粒子とみられる新粒子の発見は、7月に発見が報告されたことにちなんで、素粒子物理学における「七月革命」と呼ばれるようになった。ヒッグス粒子は素粒子論の枠組み「標準モデル」の中で、存在が予言されながら未発見だった唯一の素粒子。その存在がほぼ確実になったことから、研究者の関心は標準モデルを超えた新理論の探索に移りつつある。

探索の手がかりは見つかったヒッグス粒子そのものにある。素粒子は一種の自転をしていて「スピン」という物理量を持つ。標準モデルに登場する素粒子は、物質を構成する素粒子と力を媒介する素粒子に大別されるが、両者の違いはスピンの値が前者は1/2、後者が1であること(いずれも正負の符号をとれる)。例外はヒッグス粒子でスピンの値はゼロだ。この例外の解消を狙ってひとつの仮説が提唱されている。ヒッグス粒子は、スピンがそれぞれ1/2と-1/2の粒子が組み合わさってできた複合粒子ではないかという仮説だ。実は標準モデルの他の素粒子についても、より少数種類の基本粒子「プレオン」からなるとする理論が提唱されている。

また今回発見されたヒッグス粒子とみられる新粒子は質量が判明しているが、その値は量子力学の理論から予想される値と大きくかい離しており「階層性問題」と呼ばれる。階層性問題は、物質を構成する粒子と力を媒介する粒子の間に「超対称性」とよばれる結びつきを仮定すれば、比較的無理のない解釈ができる。ただ階層性問題はもうひとつ別の理論によっても解決できる。余剰次元だ。

私たちはこの世界を3次元空間として認識しているが、万物を説明する究極理論の有力候補、「超弦理論」によれば、実際には10次元(または9次元)で構成されていることになる。この10次元から、私たちが認識できる3次元を差し引いた7次元は余剰次元と総称される。余剰次元は非常に小さく、10のマイナス35乗メートルくらいまで丸めこまれているので、それらの存在が認識されていないという理解だ。しかし、余剰次元のいくつかは、それよりも桁違いに大きい1ミリメートルくらいの距離まで広がっている可能性もあり、もしそうであれば階層性問題はそもそも存在しなくなる。

ヒッグス粒子とみられる新粒子は、欧州合同原子核研究機関(CERN)にある世界最強の加速器LHCを用いた実験で発見されたが、新粒子の詳しい特徴を知るため現在でも実験が続いており、プレオンや超対称性、余剰次元などの探索も同時並行で進んでいる。余剰次元についてはLHC実験ではなく、重力の精密測定が突破口になる可能性もある。

(詳細は24日発売の日経サイエンス1月号に掲載)