【Nature】宇宙の謎 東北から迫る

2012年8月22日

SANKEI EXPRESS

岩手県は日米欧の研究者が世界で一つだけ建設を計画する大規模研究施設、直線型加速器「国際リニアコライダー」(ILC)の誘致を目指している。「神の粒子」と呼ばれ、存在が確認されつつある「ヒッグス粒子」解明に不可欠とされる施設で、東北から宇宙の謎に迫る試み。経済効果も見込め、県は東日本大震災からの復興のシンボルにするつもりだ。

■研究施設の誘致へ

ヒッグス粒子とみられる新粒子を発見-。7月4日、欧州合同原子核研究所(CERN、スイス)で実験を続ける国際チームの発表を知り、岩手県政策推進室の担当者は色めき立った。

CERNの加速器は円形、ILCは直線と形状は異なるものの、ともに巨大な地下トンネルの加速器で、粒子を衝突させて宇宙の起源に迫る施設だ。

岩手県は1990年代からILCに関心を寄せてきたが、震災発生後の昨年4月、経済効果が期待できるとして達増拓也知事がILC誘致で震災復興につなげようと国の復興構想会議に提言。本年度から県政策推進室に誘致のため6人の専任職員を配置し、取り組みを本格化させた。

県政策推進室の細越健志特命課長は「ヒッグス粒子が見つかればILCの必要性が高まる。誘致の追い風になると感じた」と振り返る。

■経済効果は4.3兆円

候補地は県南部の北上山地。活断層が無い硬い岩盤が建設の条件で、震災でも被害がなかったとPRする。ILC建設を推進する東北大大学院の山本均教授(物理学)は「ILCはCERNの加速器より圧倒的に感度が高く、ヒッグス粒子の解明や、新たな物理の原理に迫ることができる」と必要性を語る。

東北6県や東北経済連合会などでつくる「東北ILC推進協議会」は、研究施設のほか宿泊施設、国際会議場などの整備を想定。建設開始から30年間で経済効果は4兆3000億円、雇用は約25万人と見込む。世界中から集まる研究者やその家族だけで約1万人の人口増も予想している。

2013年から研究者による建設地選定作業がスタートし、数年後に建設地が決まる見通し。北上山地のほか福岡、佐賀両県にまたがる脊振(せふり)山地、米・シカゴ近郊、スイス・ジュネーブ近郊が候補に挙がっている。

岩手県の大平尚首席ILC推進監は「ILCは東北の震災復興のシンボルになる。国の協力も不可欠なので、積極的な要望活動を展開したい」と話している。