ILC誘致へ課題、将来像探る 推進向け2氏が講演

2012年8月26日

岩手日日新聞

奥州市民有志らで組織する「いわてILC加速器科学推進会議」(亀卦川富夫代表幹事)主催の国際リニアコライダー(ILC)計画推進講演会は25日、同市水沢区佐倉河の市文化会館(中ホール)で開かれた。約350人が参集。野村総合研究所社会システムコンサルティング部担当部長の北村倫夫氏と元東北大大学院教授で都市計画家の大村虔一氏が北上高地が有力候補地となっているILC計画が地域にもたらす可能性、誘致を目指す地域に必要な視点などを語った。

基盤づくりへ地域改良を 大村氏
大村氏はスイスとフランスの国境にまたがる欧州原子核研究機構(CERN)の立地環境、筑波研究学園都市から見た学園都市整備の課題、大学と市が協働で取り組むベルギーの大学都市のまちづくりなどを解説。北上高地については「人口減が著しい高齢化社会で拡散型の居住パターンになる。地域の暮らしを持続するための改良が求められている」とし、北上高地の自然と社会環境を生かした世界最先端の学術研究のための基盤づくりの取り組みを示した。

その中で、ILCの誘致に向けた課題について「世界から集まる研究者や技術者、その家族にとって暮らしやすい環境になるには周囲の人々が心豊かな暮らしができることが大切。国際的研究施設の計画と同時に、それを活用し地域の次代の暮らしを描く計画づくりが必要」と指摘。計画の具体的な視点として▽研究者のニーズを反映したキャンパスプラン▽国際標準の居住環境▽家族や子供の文化の享受や教育機会の充実▽知的好奇心を喚起する地域環境▽研究者村に閉じこもることのない地域との交流機会の創出-などを挙げた。

また、北上盆地に連なる都市同士の連携の必要性も強調し、「行政間だけでなく各分野で連携を深めたい。それぞれの事業主体が経営的側面から判断するだけでなく、地域を豊かにする視点から連携を模索することが大切。都市が個性を発揮して競い合い、地域の魅力を高め、ILCや平泉の国際化効果を大きく受け止めたい」と語った。

北上高地周辺地域の価値については自然や産業、文化などを例示しながら「スイスやフランスに勝るとも劣らぬ可能性を秘めた地域。地域の良さをしっかり見詰め、みんなで支えながら活用する必要がある」と述べた。

東北全体の連携が重要 北村氏
北村氏は「ILCを核とした東北の将来ビジョン-東日本大震災からの復興に向けて-」をテーマに講演し、計画の概要や東北で実現することの意義、経済波及、イノベーションの効果などを丁寧に紹介。「ILCを核とする国際科学技術研究圏域(都市)ができるが、これをいかにつくっていくかが、東北地域の課せられた課題」とし、学術研究機関や産業との交流連携、国際レベルの生活環境整備など、地域の戦略として東北全体でILCと連携していく重要性を強調した。

ILCの建設条件について説明した北村氏は「固い岩盤の上にあるというのが大前提だが、3000~5000人規模で研究者、技術者が来るわけであり、生活利便性や交通アクセスなどトータルでの社会基盤、条件が整っていることも重要」と指摘。

国際科学技術研究圏域のコンセプトについては、世界最高水準の基礎科学を牽引(けんいん)する「オンリーワンの世界研究拠点」や世界へ波及する「先端技術イノベーション」の創出、異なる国籍・文化を持つ人々が交流する「グローバルコミュニティー」の形成、世界から集まる人がストレスなく生活できる「ユニバーサル生活環境」の提供など5項目をポイントに挙げた。

北村氏は「研究拠点や関連する産業など、東北全体で上手にILCと連携するということが地域の戦略として重要になってくる」と述べた上で、「地域振興面では東北全体の人口流出に歯止めがかかるほか、科学技術人材の育成が進む。見学者がたくさん来るので、サイエンスツーリズムも活発になる」と実現した場合に想定される効果についても説明。東北復興の起爆剤としての実現に大きな期待を表した。