<ILC>トリチウム水 厳重に管理 道園真一郎教授に聞く(河北新報)

2019年2月8日

<ILC>トリチウム水 厳重に管理 道園真一郎教授に聞く

「安全対策に万全を期す」と話す道園氏=1月23日、茨城県つくば市の高エネルギー加速器研究機構

 国際リニアコライダー(ILC)を推進する高エネルギー加速器研究機構(茨城県つくば市)でILC研究開発プロジェクトリーダーを務める道園真一郎教授に、施設で生じる放射性物質と対策について聞いた。
(聞き手は東京支社・片山佐和子、報道部・高橋鉄男)

-ILCの実験でどんな放射性物質が生じるのか。
「計画では電子と陽電子を全長約20キロのトンネル内で衝突させ、使用後のビームを『ビームダンプ』という水を満たした設備で吸収する。この水の中にトリチウムが発生する。トリチウムは半減期が約12.3年と長く、水を厳重に管理する必要がある」
「ダンプは100トンの水を閉鎖循環させるので、運転期間中に約100兆ベクレルのトリチウムが積算される。不具合や水漏れが起きた場合に散逸を避けるため、ダンプ室は多重遮蔽(しゃへい)する構造にする。同様のダンプは米国の加速器施設で使用実績があり、事故や故障は起きていない」
-計画終了後の設備や水は、どう処理するのか。
「100トンの水は200年保管すればトリチウム濃度が排出基準値を下回り、ダンプ本体も低レベル放射性廃棄物の3段階評価で最も低い『L3』に該当する。いずれも、地元ではない埋設処分地などでの管理を想定している」
-建設候補地に地下水の放射化への懸念がある。
「ダンプ室は鉄やコンクリートで十分に遮蔽し、地下水の放射化を防ぐ。その他、電子や陽電子ビームが何らかの理由で曲がっても、これを察知してビームを止める装置を組む。定期的に地下水を検査して対策に万全を期したい」
-2013年に加速器実験施設「J-PARC」(茨城県東海村)で放射性物質漏れ事故が起きた。ILCの建設候補地にどう安全性を訴えるか。
「事故の教訓も踏まえ、施設の設計と運用を行う。建設候補地の住民に正確な安全対策情報を伝え、不安を解消してもらわないと計画は進められない。今後は建設候補地で直接説明する機会を増やしたい」

みちぞの・しんいちろう 東大大学院博士課程修了。1992年高エネルギー加速器研究機構入りし、2016年からILC研究開発プロジェクトリーダー。専門は加速器科学。54歳。鹿児島県出身。