今年一月、埼玉県和光市の理化学研究所にて、一年中咲く「仁科乙女」という桜が
原子核や素粒子の研究に使う「加速器」から生まれました。「木肌が赤く美しい品種
『敬翁桜』に炭素イオンを照射してつくりました」と同研究所生物照射チームの
阿部知子博士は語る。
炭素原子からマイナス電荷を持つ電子をはぎ取ると、プラスの電荷を帯びた炭素イオンが
残ります。これを加速器で光速の半分ぐらいまで加速し、弾丸のように植物に当てると
「植物のDNAの二重鎖がすぱっと切れ、遺伝子が短くなったり、別の遺伝子とくっついたりして、
効率よく突然変異が起こるのです」。低温に反応して開花を促す遺伝子が変異したため、
「普通の桜は一定期間低温にさらされないと咲かないのですが、仁科乙女はずっと暖かくても
開花します」。
阿部博士は花のほかに、草丈が低くて風に倒れにくいソバや、塩水で育つイネなども
開発されました。鉛やカドミウムなどの重金属を吸収するコケの性質を強化して、
汚染土壌を改善する研究も進めています。
CHUNICHI Web (中日新聞) 2010年4月19日
"<サイエンスリポート> 一年中咲く桜"