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コラム「ILCサポーターズ」に期待!を掲載

ILCの日本誘致活動は、2004年に国際将来加速器委員会(ICFA)が国際リニアコライダー計画を公表した直後から、わが国の素粒子物理学者と加速器研究者たちによって始まった。2006年には自民党有志による「リニアコライダー国際研究所建設推進議員連盟」が設立され、政治の後押しを得ることができた。その後2008年に設立された産官学連携組織「先端加速器科学推進協議会(AAA)」が中心となって、以来10年にわたりILC日本誘致活動を支援してきた。ICFAは、2017年11月にILC国際設計組織が示した新設計案(250GeV直線20km加速器設備)を支持する声明を発表して、ILCを日本のイニシアチブによる国際プロジェクトとして、時宜を得て実現することを強く奨励した。あとは日本政府の正式承認を待つところまで漕ぎつけている。ここで日本政府の決断を促すのに必要なのは、オリンピックの東京招致と同じようにプロジェクト資金の負担を容認する国民の支持と声(世論の盛上り)である。

 

そんな折、AAA松岡事務局長から「これまでのILC日本誘致活動を記録にまとめて、広く一般の方々にPRしたい。本にして出版したいので、原稿を書いてほしい。加速器の専門家が書くより、一般人が一般人目線で書いた方が分かりやすいはずだ」と依頼された。これも何かの巡り合わせと安請け合いしたのが運のつき。ことは言うほど簡単ではなく、記録としての事実の時系列描写はともかくとしてILCの科学的意義や学術的な説明に苦吟する羽目となった。いまだ解明されていない宇宙の謎とはなにか?その謎を解明できるILCという先端加速器とはどのような代物なのか?なぜ日本に建設されるのか?日本の果たす役割と成果はなにか?について一般国民の理解を得ようとすれば、ヒッグス粒子や宇宙の法則、粒子加速器実験など専門領域に話が及ぶ。ところが、同じ基礎科学分野の天文学、宇宙空間科学と違って、素粒子・原子物理学研究に必須の加速器は一般国民の目に触れる機会がすくなく、その機能・作用が“目に見えない”ことから、どうしても一般の理解度が低くなる。日常生活で見聞きしたり、体験することがないモノゴトや事象の原理を文章で理解してもらうためには、読み手は何も知らないという前提で分かりやすい言葉に翻訳する作業が必要なのだ。

 

自分自身は素粒子物理学門外漢という点では確かに一般人だが、加速器を製作・販売した経験から加速器実験設備を熟知し、加速器の用途も理解している点では、もはや一般人ではないということに原稿を書き始めて気がついたのだが、後の祭りである。難行苦行の挙句さる3月に上梓した「日本発宇宙行き 国際リニアコライダー」(講談社)では、できるだけ一般人と同じ目線に立って翻訳したつもりだが、一般の方々の理解が得られただろうか。いささか心もとない。

 

この点では、さる4月14日に発足した一般人有資格者の集まりである「ILCサポーターズ」の活動に大いに期待している。「ILCサポーターズ」は、ILC日本誘致を実現するため各界の有志によって結成された応援組織で、世界的な映画監督である押井守氏の呼びかけによって映画業界・出版業界を中心に広まった有志が、ILCプロジェクトの意義と認知度を広めるためのバックアップ活動を展開している。中心メンバーは多士済済であり、異分野の優れた頭脳と類まれな感性によってILCの科学的意義や学術的な説明を一般国民の心に刺さる表現で伝えてくれることだろう。

 

欧州原子核研究所(CERN)は、ヒッグス粒子がメディアによって「万物に質量を与えた神の粒子」と紹介されたことを上手に使って人々の興味と関心を引きつけ、2012年に大型陽子・陽子衝突型加速器(LHC)による「ヒッグス粒子=神の粒子」発見という成果をあげて名声を博した。ILCは、その「神の粒子」を使って宇宙の法則を決定しようとするものだから、和風に「あまてらす(天照)」とでも名付けてプロジェクトを喧伝すれば、日本国民の関心を引くかもしれない。

 

「ILCサポーターズ」が新たな起点となって世論を盛上げ、国民の支持の声を政府に届けてくれることを願ってやまない。

(馬画人)

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