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コラム「40光年離れていても標準理論は通用するのか?」を掲載しました。

ちょうど一年ほど前に、みずがめ座の赤色矮星「TRAPPIST-1」の周囲に地球サイズの惑星を7つ発見したと米国宇宙航空局(NASA)発の報道がありました。これら7惑星はすべてが地球サイズで、しかも内側の6つについて、質量や密度を推定したところすべて岩石惑星らしいことも示されました。 惑星の年齢も地球程度に古く、知的生命体までの進化がありえる星たちとのことでした。宇宙はとてつもなく大きいので、地球人以外の知的生命体がいてもおかしくないと考えられていますが、「誰かいませんか?」との人類からの問いかけ発信に応答してくれる存在(宇宙人)は今のところありません。宇宙人との遭遇がないことに対しての解釈の一つは、仮に存在してもお互いの文明の寿命より遠く離れすぎていて、知的生命体としてオーバーラップして存在することが難しいのではないか?それほど宇宙が大き過ぎるのではとの考えがあります。 しかしNASAの昨年の発見はこれを覆すことができるものです。40光年の隔たりとは光のスピードでたった40年しか離れていないということです。もしそこに知的生命体がいて我々程度の文明を持っていれば40年前に発した地球からの電波を受け取っている可能性があります。1980年代は世界中のテレビやラジオから電波がどんどんと発せられていました。第二次世界大戦の様子を伝えた番組も届いているかもしれません。 40光年先でも電磁気学や素粒子の標準理論は通用するのでしょうか? 通用するはすです。どちらも相対性理論とゲージ理論の方程式で書かれているからです。相対性理論は素粒子を観察している人がどのような運動状態にあっても現象が変わらないことを保証します。ゲージ理論は素粒子を観察している人の場所や時刻によって運動の様子が変わらないことを保証します。標準理論はいつ・どこであっても素粒子の運動方程式が変わらないように作られているので、40光年離れていようが遠い昔のことであろうが同じことが起きるように作られており、そうして作られた方程式の予測する値がこれまでの加速器実験で測定され、標準理論の有効性が確認されています。 もしその彼方の知性体が私たちと同じ物理学に到達しているとすると私たちと彼らとどちらがより深く自然の法則を知っているのか、が焦点になります。人類がライオンに食べられないで生き残れているのは、人類は科学法則を知っていて、電気を作り鉄を精錬し、鉄で覆われた高速で移動する自動車を作ることができるからです。40光年先の知性体も同じレベルの知識を持っていれば危険はないですが、もし彼らが自然のより深い法則を知っている場合は、ライオンと私たちの関係の逆が生じます。人類が生き残れるかどうかの鍵はどちらがより深く自然の法則を理解しているかにかかっています。 これまでは人類以外に自然の法則を知る存在はいなかったので呑気にしていられましたが、一旦法則を理解する知性体が現れたら危険です。 40光年先でILCがつくられても同じ素粒子反応が起きます。もし先方がILCを運転していたら、今問題になっているヒッグス粒子の謎をすでに解明していることでしょう。聞いてみたいですね。「そちらではILC実験は始まっていますか?」「こちらはこれから日本で始めるところです!!答えを教えてくれなくて結構です。謎は自分たちで解きますから。」

順風奔放

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