2017年12月7日

バリー・バリッシュさんのノーベル物理学賞受賞に寄せて

 

 バリーさん(以降、バリー)、受賞おめでとうございます。重力波検出は研究者の長年の夢でした。この快挙に敬意を表します。

 重力波検出実験というとあることが思い出されます。1987年のカミオカンデによる超新星ニュートリノの初検出以降、光(電波、赤外線、可視光、X線、ガンマー線)以外の手段による天文学研究が盛んになりました。1988年から始まった科研費重点領域研究「素粒子的宇宙像の総合研究」で、研究代表者の菅原寛孝先生(元KEK機構長)が、“私の目の黒いうちに重力波検出を見たいものだなあ”とつぶやかれ、重力波検出を領域研究の一つに加えました。

 バリーとの研究上の付き合いはこの頃からで、イタリア・グランサッソ地下研究施設で1989年から始まったMACRO(Monopole, Astrophysics, and Cosmic Ray Observatory)実験のリーダーをしていたバリーと、ニュートリノの国際会議でよく顔を合わせましたが、言葉を交わす程度でした。しかし、2006年に私がKEKの機構長になると一変しました。当時バリーは、ILCの国際技術開発チーム(GDE)の責任者としてILCの技術設計に邁進していました。そんなさなかに、加速器に無知な私がKEKの機構長なり、その職が務まるのだろうかと心配したようでした。それは、着任して2カ月後のイタリアのエルバ島で開催された国際集会のバリーの報告の中に示されています:
(http://www.linearcollider.org/ILC/GDE/Director%27s-Corner/2006/15-June-2006---Able-was-I-ere-I-saw-Elba)。その中に、“Of particular interest to me was the talk by Atsuto Suzuki, the new director general of KEK, who gave his first presentation outside Japan since taking on his new position. We are all anxious to learn about the future plans in Japan and the priorities of the new KEK director”。幸いにもバリーは私の講演を聴いて、安堵したようでした:Atsuto’s talk was very・・・to his obvious mastery of the entire Japanese Program)。

 その後は、ICFA(国際将来加速器会議)、ILCSC(ILC運営会議:LCBの前進)等で、ILCの実現に向けて大いに議論しました。また、2011年にSuper-KEKBの共同研究機関となったPNNL(Pacific Northwestern National Lab.)に立ち寄った際には、研究所の近くにある重力波干渉計(LIGO)を見学させてもらいました。

 バリーは今年のノーベル賞受賞者発表の後に、日本におけるILC建設に期待するメッセージを送ってくれました。その一部の抜粋です:“ILCは何十年にもわたって素粒子物理学の中心となるでしょう。日本は、まさに現在、最も基本的な研究分野における将来の中心的な施設をホストする千載一遇の機会を持っています。日本がこの機会をつかんで、この素晴らしいプロジェクトをホストする決定を下すことを心から願っています”。

 エルバ島から~10余年の歳月が流れました。バリーが再度、安堵してくれるよう、今こそILCの日本建設を実現する時です。

                                  


鈴木厚人

岩手県立大学学長

(一社)先端加速器科学技術推進協議会副会長