2014年5月9日

もう一つの地球探しに思うこと


 太陽系外に存在している地球型の惑星探しが、ようやく本格的になってきたようだ。この4月、そんな予感を感じさせる報告がアメリカ航空宇宙局エイムズ研究所で運営管理されている太陽系外惑星探査衛星ケプラーの観測成果として発表されている。

 それによればケプラー衛星が観測した地球から500光年かなたにある表面温度4000度足らずの低温の星の周りに、地球と同じぐらいの大きさで地表に液体の水が存在できる範囲の距離に軌道がある惑星が発見されたと言う。この惑星は、これまでケプラー衛星で発見されていた地球型惑星が地球直径の1.4倍以上だったのに対して、1.1倍と推定されており、ほぼ地球と同じ大きさ、おまけに表面には液体の水の存在も期待できることから研究者たちは地球に最もよく似た惑星発見の第1号とみなしている。

 ケプラー衛星は2009年3月6日に打ち上げられ、太陽を回る地球軌道上から、地球を追いかけて太陽を回り、太陽系外の惑星探査活動を続けてきた。この探査衛星の目標は、夏の夜空でおなじみの「はくちょう座」と「こと座」の一角に観測領域を固定し、領域内に位置する星々の中に存在する惑星を発見することだった。このため、衛星が持つ口径140センチの反射望遠鏡を三軸姿勢制御により観測領域に固定し、この領域内に位置する10万個以上の星からの光を同時に観測することができた。現在は姿勢制御トラブルで精密観測は出来なくなっているが、昨年夏までの3年半に得られた大量の観測データの解析が進行中で、それに伴う新たな発見が期待されている。この春の成果もその一つだ。

 膨大な数の星の光の観測から、ケプラー衛星が試みた太陽系外惑星の探し方をまとめておこう。それは、惑星を持つ星に期待される明るさの変化を捉えることだった。観測している星に惑星が存在すると、この星の前面を惑星が通過することも起こり得る。その際には星の明るさの変化が観測できる。金星の太陽面通過を眺めた方は思い出してほしい。太陽を月が隠す皆既日食の方がもっと印象的かもしれない。ケプラー衛星が星の光を測定して発見しようとしているのは、こんな惑星の食を示す星だと言える。

 ひとたび、惑星食が見つかると、食の様子から惑星の大きさや公転周期など、食を起こした惑星に関する情報がいくつも引き出せる。同時に、食を起こした星の位置が決まるので、地上にある大型望遠鏡などによりさらに詳しい観測も可能になる。

 太陽系外惑星探査で星の前面を惑星が通過する機会を発見する方法では、星からの光の変化さえ捉えられれば惑星の存在を探ることができる。太陽系外惑星の探査では、星の周りに存在する惑星の重力の影響で星がふらつくことから星の光に生ずるドップラー効果を利用する方法が最初は成果を重ねて大活躍した。この場合、星に対して重力の効果を持つ惑星は、星に近い重い惑星に限定されるので、この方法で発見された惑星のほとんどが木星より大きい木星型惑星である。これに対してケプラー衛星が試みた方法は地球型の小さい惑星を探すのにも優れた方法だった。今回、地球に最も似た惑星が発見できたのもそれを物語っている。

 この20年間、太陽系外に発見され科学的に確定した惑星の数は1800個ほどにもなる。この中で中心星からの距離が液体の水の存在を可能にする範囲の軌道にある惑星は10個ほどしかない。今回発見された惑星はその中で最も小さく地球とほぼ同じサイズだった。地球に最もよく似た惑星と認められた理由である。

 この惑星、質量や組成は不明だが大きさからみると岩石質の惑星である可能性が高く、赤色矮星と呼ばれる太陽の半分ほどの質量の星の周りを回っている。この星の周りには五つの惑星があり、この惑星が一番外側の惑星であることも判明している。そのため、この惑星が中心の星から受ける日差しは太陽の3分の1ほどしかなく、真昼でも地球の日没前ぐらいの明るさだと言う。この惑星だけが液体の水が存在できる範囲にある惑星だが、大気の濃さや組成によって地表の温度は激しく変わるので、必ずしも生命の存在に適した環境にあるとは限らない。もう一つの生命が存在する地球に人類が出会うのもなかなか容易ではなさそうに思える。

 太陽系外の惑星発見で最初に大きな話題となったのは、1995年、「ペガスス座」51番星の周りに発見された木星サイズの大型の惑星だった。この惑星は中心にある星から太陽系との比較で言えば水星軌道よりもはるかに内側に入った軌道に位置を占め、星に近過ぎる木星型惑星として「ホット・ジュピター」と呼ばれたことを思い出す。それから20年近く経過した。これまで書いてきたように太陽系外に発見された惑星の数は増え続けている。

 今回の地球に良く似た惑星の発見を知ると、宇宙の中で生命が存在できる環境を持った地球のような惑星の発見も今では不可能ではなさそうだ。そんな宇宙科学の未来に思いを馳せるときいつも気にかかることがある。今後、宇宙の中で発見される惑星の中で、地球の存在はどれだけありふれたものになるかと言うことだ。銀河系の中に存在する地球の様な文明が生まれる惑星はどのくらいあるのか、有名なドレイクの文明方程式を思い出すとき、地球の様な惑星の存在をどう科学的に評価できるようになるのか、そんなことにも関係している疑問にも果たして最適な答えが見つけることが出来るのか、・・・。

 今回の発見も、これまでの科学の歴史が物語るように、科学と言う人間の営みは答えを見つけるより、新たな疑問を生み出すほうが得意な面を際立たせているような気がしてならない。

高柳 雄一
多摩六都科学館館長