2014年3月11日

反転授業って聞いた事がありますか?


反転授業という言葉を聞いたことがあるだろうか。ときどきWebや新聞紙上に登場することがあるのでご存じの方もいると思う。最近注目されているICT(Information and Computer Technology)を使った授業のひとつだ。反転授業では,従来のような教師が学生に向かって行う講義をなくしてしまう。受講者は、予めインターネット上に準備された教材を使って(自宅で)予習してから学校での授業に臨む。授業の時間は、演習や受講生同士の議論などによって理解を深めることに費やす。このような方法自体はそれ程新しいわけではないが、実際に行うためには、各家庭にインターネットが普及することが必須条件だった。反転授業の効用はなんだろうか?


第一に学校で演習や議論の時間を取ることが容易になる。教師が受講生に向けて演習を行うだけではない。生徒どうしで議論し、教えあうことができる。経験のある方も多いと思うが、人に教えるというのは教える本人とってもっとも勉強になる。

第二に、(反転とは関係ないが)オンライン教材による学習がある。オンライン学習ではコンピューターやタブレットを見ながらそこから聞こえてくる話を聞く。無味乾燥な授業という印象をうけるが実際はどうだろう。機械相手のよいところは、相手に遠慮する必要が全くないことだ。自分の好きなペースで聞くことができる。何度聞き直しても文句を言わない。もちろん人間が行う講義でも質問は大歓迎だし、教師は何度でも説明するつもりでいる。しかし、機会が相手の場合、受講者は講師にも周りの受講生にも全く遠慮する必要が無い。受講者が自分のペースで心置きなく学習するためには,相手が人間でない方がやりやすいことも多い。


 反転授業と関連が深い活動として,大学で行われている講義をWeb常で行い,修了認定を行おうという動きがある(これを大学の単位として認定するかどうかは別の議論が必要だが)。大規模公開オンライン講座(MOOC=Massive Open Onoline Course)と呼ばれている。東京大学がこの講座を開設し,村山斉IPMU機構長による「ビッグバンからダークエネルギーまで(From the Big Bang to Dark Energy)」 が配信されたのはご存じの方もいるのではないだろうか。MOOCは英語だが,日本でもJMOOCという活動が始まった。広島大学もこれに参画している。ちょうど今日(2014年3月4日)学内で開催されたICT活用教育研究会の話題がJMOOCだった。話を聞いてみると,オンライン講座の教材というのは単に授業風景を録画するのではなく,10分~15分で完結の教材を組み合わせて一つのコースとし,演習や試験も行うなど,受講生がきちんと学ぶ事ができるようにいろいろと工夫されている。教材を作るのもかなり大変そうだ。村山機構長に会う機会があったらその辺りのことを伺ってみよう。

話がそれたが,反転授業もMOOC(もちろん反転授業の教材としても使える)も情報技術を教育に役立てる手法である。最初に反転授業ありき,MOOCありきではない。今日のJMOOCの話でもオンライン講座のコンテンツをどのようなに教育プログラムに組み込むかが話題となった。オンライン教材を使った教育・授業のシステムとして有名なものにカーンアカデミーというのがある。だれでも無料で受講することができる。私もカウントを作って登録している。カーンアカデミーができた経緯や将来について,創始者のサルマン・カーン氏がビデオで語っている。TEDという一般向け講演でそれ自体がとても面白い。興味のある方はご覧になってはいかがだろう(最後にビル ゲイツ氏が登場して期待を語るおまけ付きだ)。その中でカーン氏が「Using technology to humanize the classrooms (教室に人間味を持たせるために技術を使う)」という主旨のことを言っている。機械ができることは機械にやらせて,教室では人と人の対話でしかできないことをやる。ICTと教育との関係も結局は人と技術のあり方に帰着するようである。

教室の様子は私たちが学生であったときとは大きく変わるかもしれない。未来を担う若者に少しでも手助けができるように,私たち教員も考え努力している。もちろん「未来」にはILCが含まれている。

高橋 徹
広島大学