2012年11月9日

AAA九州シンポジウム+カソクキッズ

 

先月末、福岡で開催された、「第3回先端加速器科学技術推進シンポジウム2012 in 九州」に参加してきました。目玉講演は、今年7月にヒッグスと見られる新粒子を発見した、と発表したスイス・ジュネーブの欧州原子核研究機関CERNのホイヤー所長による「LHCで宇宙の秘密を探る」でした。


もちろん英語でのご講演でしたが、大阪大学大学院の花垣准教授の逐次訳により、会場の参加者全員がヒッグス粒子の発見の話を楽しくお聞きしました。ホイヤー所長は、難解な物理学の成果をイメージあふれるたとえを用いて説明くださいました。例えば、LHC実験でヒッグス粒子を探す難しさを、吹雪の中で特別な雪の結晶を探しだすことに例えました。一面に雪が広がるナルニア国の冬の光景が目に浮かび、その雪景色の中から、キラキラ光る新しい雪の結晶を探し出そうとしている光景が想起されました。


また、ヒッグス粒子と特定するためには、スカラーと呼ばれる、これまでの素粒子が持っていない性質を見極めることが大事なのだ、との説明で、ホイヤー所長は、スカラーを湖に例えました。川は流れているので、上流に向かって泳ぐか、下流に向かって泳ぐかで、泳ぎの困難さが変わってきます。このように、向きを持つ素粒子をベクターと呼びます。一方、湖で泳ぐときは、泳ぎの向きによって泳ぎの困難さはかわりません。このように、向きの性質を持っていない素粒子をスカラーというのです、と。ここでも中世の城が燦然と輝くヨーロッパの静謐な湖のイメージが彷彿とあらわれました。


このように、イメージを想起させるたとえ話をふんだんに取りこんだ講演を楽しんだのですが、実は、このとき私の横の席に、小学生の男の兄弟が座っていて、熱心にシンポジウムに聞き入っていたのです。そして休憩時間になると、カソクキッズを取り出して、熱心に読みます。カソクキッズとは、KEKのWEBで連載している科学マンガです。冊子体も、郵送料は自己負担をお願いしていますが、配送しています。つくばでのKEKの一般公開にも、小学生のカソクキッズファンが多く来てくれるのですが、つくばから遠くはなれた福岡の地で、カソクキッズファンがいてくれることを知り、とてもうれしく思いました。


福岡シンポジウムの翌日は、KEKキャラバン出前授業への要請により、佐賀に移動し、サイエンスフェスティバル「わくわく祭エンス」に参加しました。出し物は、霧箱による放射線の観察と、パネルを使った加速器科学の説明でした。このサイエンスフェスティバルは、もともと小学生が対象なので、多くのお子さんたちが、霧箱をのぞいてくれていたのですが、ひとりの子のお母さんが「この子はKEKのカソクキッズの大ファンなんですよ」と声をかけてくださったので、そのお子さんに「読んでくれてありがとう」と声をかけましたところ、その後、私がする素粒子や宇宙の説明に、「それは、第3巻の〇〇に書いてあるお話ですね」とか、「それは、第2巻の〇〇」とニコニコしてつぶやくのです。もうびっくりしてしまい、何歳ですか?と聞くと、9歳とのこと。その後、その子は私のサイエンスカフェにも、最前列に参加してくれ、話の中で出した4択の数々の小問題に小声で答えてくれていました。


KEKの連載しているマンガなので、手前味噌で恐縮なのですが、あらためてカソクキッズの威力におどろいた九州の旅でした。


お時間がありましたらカソクキッズは、こちらからお読みください。
http://kids.kek.jp/comic/

高エネルギー加速器研究機構 藤本順平