2012年6月30日

はやぶさの日

 

 今から2年前の6月13日に小惑星探査機「はやぶさ」が地球に帰還したのを記念して JAXA宇宙航空研究開発機構の研究施設がある相模原市を始め、JAXAに縁がある全国の6 つの市と町が6月13日を「はやぶさの日」として偉業を伝えていくことになったと、NH K首都圏ニュースで報じられていた。「はやぶさ」は世界で初めて小惑星「イトカワ」か ら物質を持ち帰るという偉業を果たしたこともさることながら、通信が途絶えて一時行方 不明になるなど相次ぐ機体トラブルに見舞われながらも、奇跡の復活を果たして地球に帰 還。しかも、7年にわたる地球~イトカワ往還60億kmの旅を終え、小惑星で何かを採取したと期待され るカプセルを無事地球に届けるという大役を果たしたにもかかわらず、自らは大気圏再突入 で燃え尽きたというドラマ性が人気を博し、「はやぶさ」物語本が何冊も出版されたり、映 画にもなった。その様は、日本全国まるで「はやぶさ」フィーバーのようでもあった。「は やぶさ」の偉業には続編がある。「はやぶさ」が持ち帰った微粒子は約1500個。これまで の分析で、イトカワは太陽系誕生から約630万年以降に他の天体との衝突によってできた と推定されているが、更に解析を進めれば、イトカワが誕生した年代などが詳しく分る可能 性があるという。


 「はやぶさ」は、これほどの科学的価値をもたらしているにもかかわらず、それがわずか2年 でメディアの扱いはローカルニュースに変わってしまうのである。JAXAが「事業仕分け」を 乗り越えて、はやぶさの後継機となる「はやぶさ2」を2年後の打ち上げを目指して開発中 であることも、もはや大半の方はご存知ないかもしれない。これも、熱しやすく冷めやすい 日本人の国民性の成せる業なのだろうか。昨年3月11日に発生した東日本大震災の衝撃が あまりにも大きく、それ以前の出来事の印象を薄めてしまったことによるものなのか、そ れとも伝える側の意識の問題なのだろうか。わかったことは、科学分野で起こった、或はこ れから起こるであろうイベントの価値を、一般の方々に過不足なく伝える広報の難しさであ る。


 先端加速器科学技術推進協議会は発足後4年を経過しても会員数が増え続け、「国際リニア コライダー」への理解を広めているようにも思われるが、日本誘致というレベルにまで国民 の意識を高められているかというには、心もとない。熱しやすく冷めやすい日本人の国民性 を勘案すれば、一気に熱を上げるより、じわじわと熱を上げて冷めにくくするほうが良さそ うである。「はやぶさ」ほど劇的でなくとも、『ILCが大震災を乗り越えて日本復興のシン ボルになる』という物語は、その熱源にならないだろうか。そのためには、ILCの伝道師 たる熱き語り部が、たくさん要る。2年ぶりに協議会に復帰した小生も、微力ながらその語 り部の一人になりたいと思う。いつか「ILCの日」ができることを願って。


 

馬画人