2009年06月08日

「放送大学面接授業~基礎研究に対する興味~」    広島大学 高橋 徹

 

放送大学は,その名の通りテレビなどを通じて授業を実施する大学なのだが,それだけではなく,年に何回か全国各地にある学習センターやサテライトに出向いて授業を受けることになっている。今回その放送大学の面接授業の講師を引き受け、2日間で85分授業を8回というかなりハードな日程ではあったが,「宇宙創生の謎に挑む素粒子物理学」というタイトルで講義を行った。

タイトルからして,基礎物理学そのものということもあり,どのくらい受講者が集まるのか多少心配でもあったが,約20名の受講があった。放送大学の学生は,職を持ちながら,あるいは退職後にさらに大学で学びたいという方が多く,今回の受講生も老若男女ばらばら,この分野のことをほとんど知らない方から,大学院時代に素粒子実験を専攻していた方までさまざまだった。

今回の授業を行って感じたことは、素粒子のように直接日常の生活に直接結びつかないことでも,熱心に話しを聞き,興味を持つ人は少なくないということだ。天文や宇宙探査に比べて素粒子は地味な感じが強いが,丁寧に話せば伝わるということだろう。もちろん昨年の小林・益川両氏のノーベル賞受賞によって,この分野への関心が高まっていることは間違いない。

また、素粒子実験技術の応用については,放射線の医療応用に簡単にふれただけだったが,もっとも受講生の関心は高く,質問も多かった。私は放射線医療の専門家ではないので,一般的な話しかできなかったが,受講生にとっては素粒子物理学よりも遙かに身近な話であり,理解もしやすかったのだろう。最近は素粒子や加速器の応用を積極的に展開することに対する認識が高まっているが,その必要性を痛感した。

もう一つ,広島という土地柄もあり,放射線に対する関心は高い。特に放射線の人体に対する影響に関して,我々のような理系の人間にできるのは,客観的な事実を伝えることだが,それだけでは社会の理解を得ることはできない。常々思っているのだが,放射線の影響については、社会科学的な観点からの取り組みが非常に重要だろう。

7年ほど前にも,今回と似た聴衆に向かって素粒子の話をする機会があったが、その時に受けた印象も同様だった。一般の方々にも、基礎科学の面白さや重要さを受け容れる土壌はあるということだ。先端加速器科学推進協議会も積極的に広報活動を行っているが,その重要性を再認識した2日間だった。