2009年03月05日

「1万2000円」の価値

 

2008年度第二次補正予算に盛り込まれた定額給付金や高速道路通行料金値下げなどの財源特例法が、3月4日に成立した。近年、国家予算まして補正予算(しかも第二次補正)の内容や成立時期に国民の関心が、これほどまでに集まったことはないと思われる。100年に一度と言われる経済危機に対する景気対策として期待されたことが理由と考えられるが、国民一人当たり1万2000円が支給される定額給付金が話題になり、国民の関心を呼ぶのに一役買ったことは間違いない。協議会関係者でも、定額給付金のような使途に制限のない2兆円の財源があれば、半分の予算で国際リニアコラダー(ILC)計画が実現できるのに、と夢想した向きが多かった。とはいえ、この定額給付金の財源とて天から降ってくる訳ではなく、れっきとした税金の一部である。

日頃、消費税の導入や税率引き上げに代表されるような「税金の徴収」には敏感だが、相対的に「税金の使途」ついては関心の薄かった国民の多くが、今回は定額給付金問題を通して、結果的に税金の使われ方(使い方)を日常会話レベルで考えたことになる。このお金が、期待されたとおりに貯蓄ではなく消費に回り、それぞれの地域経済の活性化に役立ち、これまでにない形の公共投資の効果が国民一人ひとりに実感されることになれば、「1万2000円」の定額給付金は、実体以上の価値を与えるものとなるかもしれない。

ところで、先ほどの夢の続きだが、現在リニアコライダー国際委員会で想定されているILCの建設コストは約8000億円/建設期間7年で、誘致国はその半分を負担するとの不文律が適用されると、勿論残り半分は計画に参加する世界各国が拠出することになるのだが、日本で実現する場合には約4000億円を負担する必要がある。これは、国民一人当たり約3000円/7年(毎年の金額では一人当たり約450円)の負担に相当する。宇宙の謎の解明に挑む先端加速器が、たとえ評論家立花隆氏が言うように、『日本が、自国が生み出したすぐれた科学者の理論を検証するために、これだけの超弩級マシーン(筆者注:高エネ研の加速器KEKB)を作り上げ、それで理論を見事に検証し、2人の科学者(筆者注:小林・益川両先生)にノーベル賞をとらせたという事実は、日本がもっともっと誇ってよいものである。』ものであっても、果たして日本の国民一人ひとりが、例えばILC計画のために必要な費用約3000円/7年にそれだけの、あるいはそれ以上の価値を認めてくれるだろうか?定額給付金と同じ次元で比較する話ではないかもしれないが、同じく税金の使い道の一つとして思いを巡らせた次第である。

そう云えば、基礎科学の面白さがわかる教育の普及に尽力され、先端加速器科学技術の推進にも支援戴いている平成基礎科学財団や、世界トップレベル研究拠点として宇宙の謎の解明に挑む東京大学数物連携宇宙研究機構が、必要な資金を集めるために寄付を募っている。筆者は、定額給付金で支給される1万2000円をそっくりそのまま、このような機関に寄付しようかと考えている。こちらは、間違いなく「1万2000円」以上の価値を生みそうだからである。宇宙は、遠くて、近い存在だった。

 

(馬画人)