ILC PROJECT [ 国際リニアコライダー計画 ]

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2017年06月01日

「北朝鮮の脅威で安全保障の潮目が変わった」――小野寺五典(衆議院議員)

経済界

第2次安倍内閣で防衛大臣を務め、現在は安保調査会検討チーム座長、政務調査会長代理などの立場から、さまざまな政策提言に関わっている小野寺五典氏。特に安全保障問題については、これまでにない緊迫した空気が漂う中、日本が取るべき対応をどのように考えているのか。また、復興大臣の失言などで揺れる東日本大震災の被災地に対して、宮城県選出の議員として何を思うのか。直撃した。聞き手=吉田 浩

Photo=幸田 森

抑止力向上のために日本も敵基地攻撃能力を

―― 北朝鮮の脅威が増しています。元防衛大臣であり、現在は専守防衛の在り方を議論する党安保調査会検討チーム座長の立場から、現状をどう見ていますか。

小野寺 中国やロシアも弾道ミサイルや核を持っていますが、北朝鮮は外交関係の中で議論を通じて解決を図れる国ではないという点で特異です。自国の防衛力について一切公表していませんし、国際社会で何度非難されても核開発をやめません。そういう世界で最も特異な存在が隣国であるということが、日本の安全保障にとって一番の脅威と言っていいでしょう。

―― 検討チームで、具体的にどのような議論がなされているのでしょうか。

小野寺 北朝鮮は予測不能なので、イザというときに備えることが大切です。北朝鮮が持つ一番の脅威は弾道ミサイルですが、日本の自衛隊は米軍と協力し、これを迎撃するためのミサイル防衛システムを持っています。以前であれば、北朝鮮がミサイルを発射するタイミングは大体予測できたので、イージス艦を海に浮かべ、パトリオット部隊を準備させて、1週間とか10日間だけ緊張感を持って守ればよかったのです。

ところがここ1、2年で北朝鮮は移動式のロケット技術を開発し、ミサイルを発射台に据えることなく、24時間365日いつでも撃てるようになりました。そうなると、イージス艦の隊員も常に交代しながら監視を続ける必要があり、今までのやり方では対応が非常に厳しくなります。そこで、ミサイル防衛システムを陸に上げて、レーダーサイトも常に稼働させて備える態勢のほうが、より現実的となってきました。海上からのミサイル防衛システムプラス、陸上からのミサイル防衛をセットで置くべきだと提言しています。

―― 現実的にそれを実行しようとしたときの課題は何ですか。

小野寺 装備の取得、設置は日本だけでは行えないので、米国の協力が必要です。また、場所をどこにするかという問題もあります。迎撃ミサイルを打つ際は、大きな衝撃や爆風が発生するので、住宅地の周辺には置けません。場所の選定はかなり慎重にやる必要があります。

―― いずれにせよ、時間が掛かる話ではありますね。

小野寺 自衛隊は4隻、米軍は8隻のイージス艦を保有しているので、日米共同で展開すれば、防衛能力を高めることができます。一昨年、議論を重ねたうえで平和安全法制を通させていただきましたが、こういう場合に日米が共同で展開してミサイル防衛が完璧に行えるというのが一番のポイントです。

検討チームからは、日本が北朝鮮の軍事基地に対して、反撃する能力を持つ重要性についても提言しました。日本は5兆円もの防衛費を使って、自衛隊の装備も能力も世界トップクラスになっていますが、専守防衛の観点から、相手の領土まで届く兵器をあえて保有していない点が他国の軍隊との違いです。

しかし、これまでのように飛んできたミサイルを撃ち払えば良いという時代は終わりました。弾道ミサイルを迎撃する技術は非常に難度が高く、次から次へと撃たれたらいつかは撃ち漏らして多大な損害を受けることになります。実際に相手が撃ってきたら、2発目を撃たせないために、相手の領土にあるミサイル基地を無力化する能力が絶対に必要です。抑止力を高めるためには、日本もこうした能力を持ったほうがよいと思っています。

―― まさに、潮目が変わったと。

小野寺 そうです。北朝鮮の核や弾道ミサイルについては注視してきましたが、いよいよ直接の脅威として認識すべきときに至ったいうことです。相手の能力に合わせて備えを万全にするなら、日本も反撃能力を持たなければなりません。

ポストオリンピックに必要なイノベーション

―― 経済政策についての考えを聞かせてください。特に東京オリンピック後に必要な政策とは。

小野寺 いろいろありますが、例えば、先端的な科学技術開発に特化した国家プロジェクトを推進することが挙げられます。世界的なプロジェクトでILC(国際リニアコライダー)という、国際的な協力で開発が推進されている加速器の計画があります。これは、宇宙の成り立ちを調べる過程でスピンアウトした新しい技術で、次世代のビジネスにつながる可能性が高い。その研究施設を日本に作ろうという計画があるのです。施設ができれば、世界の研究者と最先端企業が日本に集まることになります。そこで生み出された新たな技術や製品が、世界標準になっていく。シリコンバレーがソフトパワーで拡大したように、新しい技術の集積が起きるような夢のある計画に、国としてしっかり取り組むべきではないでしょうか。

もう1つ、経済政策で今の日本に足りないのは、中小零細企業の支援です。大企業の業績は良くなっていますが、次世代の新しい技術は中小零細企業から出てくるケースが多いため、政策的な後押しが必要です。この層が潤わなければ、経済の好循環につながりません。

―― アベノミクスが始まってからずっと、中小企業に恩恵を回すのが課題と言われ続けてきましたが、何が不足しているのでしょうか。

小野寺 イノベーションだと思います。新しい発想が出てこなければ、本当の意味での経済の好循環につながりません。大企業は体力があり、さまざまな分野に手を広げることによって、総合的に一定の収益を上げることができますが、中小企業はそうはいきません。しかし、専門的な分野に特化する中小企業からイノベーションが生まれなければ、大きな変化は期待できません。例えば、東京オリンピックに向けて4K、8Kのテレビが話題になっていますが、これは白黒テレビからカラーテレビに変わったような劇的な変化ではないでしょう。日本が高度成長に向かう過程では、電気炊飯器、電気洗濯機、クーラー、自動車など、購買意欲が沸く製品が次々に出てきました。そういう点で、今は全体的に停滞しているとも言えます。

復興需要がなくなっても活気を失わぬように

―― 中小企業の活性化は地方活性化にもつながると思います。宮城県選出の議員として、被災地の復興に今、何が必要と考えますか。

小野寺 被災地と一言で言っても、地域によってステージが違います。ただ、全体的に言えるのは、復興がかなり形になってきたということです。例えば被災した方々のための災害公営住宅が完成したり、新たに水産加工場がつくられたりしています。今後の問題は、被災者の方々が自立していくことです。ここで失敗すると、せっかく建てた災害公営住宅が空き家になる、水産加工場が稼働しない、といった事態になりかねません。今は非常に大事な時期です。

―― 地元の気仙沼の状況はどうですか。

小野寺 十分に復興を成し遂げて新たな展開を行っている企業がある一方、自分たちが長年納めてきた商品が他に取って代わられたといったケースもあります。生産が間に合わず、スーパーなどで自社商品の陳列棚が取られてしまうと、自分たちで努力して取り戻さないといけません。以前のシェアを取り戻すだけでなく、増やしていく努力をする必要があります。

被災地の登録人口は減っていても、復興需要によって全国から多くの人々が来ているうちは、飲食店や店舗が賑わっているので、町自体の雰囲気は寂しくありません。しかし、外部の人々がいなくなっても、町が活気を失わないように自立しないといけません。

―― 以前、総裁選に意欲を見せたこともありますが、今後の政治家としての目標は。

小野寺 あのときは自民党が野党だったので、大きく変わらなければいけないという議論をする中で、私を推していただく声もありました。ただ、今は安倍政権が安定して、国際的にも評価されています。今後についても、日本という国にとって、どういうリーダーが最も必要かという観点で選んでいけば良いのではないでしょうか。与党内でも、政策的に足りない部分などがあればどんどん提言して、議論していくことが必要だと思います。