ILC PROJECT [ 国際リニアコライダー計画 ]

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2017年03月03日

押井守氏、水口哲也氏らがテックとアートの未来占う:TOAイベントリポート

DIGIDAY

欧州のSXSW(サウスバイサウスウエスト)と言われ、起業家、投資家、アカデミア、政治家などが交流するドイツ発のテックイベント「Tech Open Air(TOA)」が東京都渋谷区で開催された(主催:TOA GmbH、株式会社インフォバーン)。映画監督の押井守氏、ゲームクリエイター/大学教授の水口哲也氏、写真共有アプリ大手EyeEm CEOのゲン・サダカネ氏、東京大学素粒子物理国際研究センター 特任教授 山下 了氏など各界の有力者がテクノロジーとアートの未来を占った。

ゲン・サダカネ氏:一般人に画像の売り買いを

写真共有アプリのEyeEmクリエイティブ・ディレクター 兼 共同創業者のゲン・サダカネ(定兼 玄)氏が登壇した。ベルリン発の写真共有アプリ「EyeEm」は全世界に1800万人のユーザーを抱え、写真の共有だけではなく、マーケットプレイスとして急成長。サダカネ氏は2016年『WIRED』ドイツ版表紙に登場している。

サダカネ氏は、カンヌで受賞歴のある広告代理店クリエイティブエージェンシーから独立し、アートプロジェクトを立ち上げた。「スマートフォンで撮影された写真のクオリティは素晴らしい。『君たちがやっていることは芸術だ』と思った」。ベルリンの移民カルチャーのなかで写真共有アプリを育て上げていく過程を説明した。

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EyeEm Marketという写真のライセンスを販売するマーケットプレイスでユーザーが自分の撮った写真をマネタイズできることは、ライトユーザーを多く抱えるインスタグラムよりも「より写真に対しシリアスな層」にしっかりはまる。

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EyeEmクリエイティブ・ディレクター 兼 共同創業者のゲン・サダカネ(定兼 玄)氏 by Futoshi
サダカネ氏は「コミュニティを重視している。そのための展覧会や物販も開くし、一般だがハイレベルな人にマーケットプレイスを渡せる。AirbnbやUberのようにお金を稼げる」と説明した。

水口 哲也:次の欲求は「多幸感」

著名のゲームクリエイター水口哲也氏とHTC VIVEセールスディレクターの西川美優氏が登場。

水口氏はレゾネア代表/米国法人enhance games CEO/慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科(KMD)特任教授を務めており、最新作『Rez infinite』はGame Award 2016「Best VR game」を受賞した。

 

西川氏は『Rez infinite』で水口氏が目指したコンセプトについて質問した。

水口氏は『Rez infinite』はすべての効果音が音楽化する世界であり、体験が通常呼び起こす感覚とそうでない感覚を同時にもつ「シナスタジア(共感覚)」を高めるため、「シナスタジアスーツ」を開発した。これを今年のSXSWに出展すると語った。

この「シナスタジアスーツ」は26個の振動素子が配置されている。ゲーム内でシューティングをする過程で発生する効果音が音楽となる。「『だんだん肩にハイハットが入ってくる』。そういうふうに振動という触感に変わる」。体ごとVR空間に没入するようデザインされているのだ。

『Rez infinite』は相手を連続して倒すと音階を駆け上がったりと、極めて音楽的体験が優れていることで知られ、タイトルの「Rez」はシンセサイザーのフィルターの「Rez(レゾナンス:共振)」から来ているようだ。

西川氏は「VRのいいところは自分を『違う空間』に連れて行くところ。ハードウェアを被ると視覚が別空間に移るが、スーツを着用すれば、身体の感覚をVR空間に連れていける」と語った。

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スカイプ出演の水口哲也氏とHTC VIVEセールスディレクターの西川美優氏 by Futoshi
水口氏は「VRの世界では気持ちいいか、悪いかが大事だ。アドレナリン的なもの終わっちゃった。2D、3Dでアドレナリンは達成したからだ。VRではセロトニン的なもの、多幸感が求められるのではないか。VR(仮想現実)と現実世界の融合が行われている。VR/MR/ARの境目はなくなりつつある」。

山下 了:宇宙創成の謎を解明する

山下氏は国際リニアコライダー計画(ILC)議長を務めている。リニアコライダーは全長約30キロメートルの加速器であり、宇宙初期の高エネルギーを再現する。2012年にヒッグス粒子とみられる新粒子が発見され、大きな進歩が見られた領域だが、リニアコライダーにより宇宙創成、時間と空間、質量の謎の解明を目指している。

山下氏は「30キロメートルは途方もない大きさだと思われるが、欧州の素粒子研究所は山手線サイズだ。日本誘致が進んでおり、日本の北上山地が有力候補として挙がっている。宇宙ができたときと同じ状況を作り出す」と語った。

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東京大学素粒子物理国際研究センター 特任教授 山下 了 氏 by Futoshi
「まだ宇宙の4%しか解明されていない。ダークマター、ダークエネルギーがあり、そこでは5次元6次元が存在する。映画で言う『ワープ』のようなことが起きている」。

山下氏は「素粒子物理には多くの発見があったが、パテントをとらない。世界に開放した。医療検査装置。いままでみんなが使えなかったものを使えるようにしてきた。ワールドワイドウェブも素粒子研究の過程で生まれている」と語った。

押井 守:我々の仕事は近未来的な世界の「捏造」

日本アニメ会の巨匠、押井氏にはイベントに先立ち、アニメ界のアカデミー賞と呼ばれる『第44回アニー賞』で、アニメ業界への功績を称える「ウィンザー・マッケイ賞」が贈られた。「生涯功労賞。もらった人は『辞めていいよ』と言われているような…」。

押井氏によるSFの金字塔『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』(1995年、劇場版)のハリウッド実写版が4月7日に公開予定だ。

 

押井氏は「『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』はコンピュータで作ったデジタルアニメーションと言われたが、制作の20%はコンピュータ。80%はCGらしく加工した。当時はそういう技術がなかった。どうにかして近代的な作品にしたいから、ビデオ加工でそれらしくした。あの作品でデジタルアニメーションの先駆者になったけど、インチキがあった」と語り、会場を沸かせた。

「我々の仕事は、近未来的な世界を『捏造』して見せることだ。『実現』することは仕事じゃない。ここを勘違いしている人は多い」。

水口氏のコンセプトである「共感覚」に関しては「自分の仕事を2Gに留めたい。距離感がないと僕らの仕事じゃない。人間は一定の訓練することで、快感をコントロールできるようになる」と語った。

「『バーチャファイター』が出たら、アニメーターがゲームセンターに入り浸って仕事をしなくなった。バーチャファイターで得られる快感がアニメ制作で得られるのとまったく異なるものだからだ。日本のアニメにもっとも変化をもたらしたテクノロジーはバーチャファイターだ」。

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映画監督の押井守氏(奥) by Futoshi
「アニメでも原画マンがタブレットで描くようになっている。手仕事をプラットフォームに乗っけて共通化する試みに、職人たちはすでに適応している」。

押井氏は『ガルム・ウォーズ』以来の次回作に意欲を示しており、次作の投資家を探している。「投資して大儲けしたいという『筋のいい金』を出してもらいたい」。

TOA:欧州最大級のテックイベント

TOAは2012年にクラウドファンディングで資金調達しスタート。年々規模を拡大し、2016年には2万人以上の人々が世界中から参加するイベントに成長した。1万4000人の起業家と450人以上の投資家らも参加し、ヘルシンキで開催されるSLASH(スラッシュ)と並ぶテック系イベントと言われる。TOAにはGoogle創業者のセルゲイ・ブリンも参加した。

TOA ファウンダーのニコラス・ヴォイシュニック氏はオープンニングリマークで「ベルリンは次のシリコンバレーと呼ばれている。増加する人口には移民が大きく寄与している。スタートアップのエコシステムが形成されており、VC投資は東京の3倍規模に達している。サウンドクラウドのような『ホットなスタートアップ』がたくさんある」と語った。

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TOA ファウンダーのニコラス・ヴォイシュニック氏 by Futoshi
「現在はブロックチェーン関連スタートアップの起業が盛んで、ビットコイン発明者のサトシ・ナカモトにあやかった『サトシ◯◯』という名称の企業が増えている。日本ではIPOのイグジットが8割を占めるが、ベルリンではM&Aが主に用いられる」。

イベントでは、ファブレス家電ブランド「UPQ」 CEOの中澤 優子氏と、ウェアラブル・トランシーバー「BONX」 CEOの宮坂貴大氏、ギズモード・ジャパン編集長の松葉信彦が若年層の起業や事業展開に関して議論を交わした。