ILC PROJECT [ 国際リニアコライダー計画 ]

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2017年05月07日

最新SF小説特集

日刊ゲンダイ

「ILC/TOHOKU」小川一水、柴田勝家、野尻抱介著

ILC(国際リニアコライダー)をつくる有力な候補地として、注目を集める岩手県の北上山地。本書は、このILCが建設された未来の東北を舞台にした3人のSF作家による競作集だ。
ILCとは、全長約30キロのトンネル内で電子と陽子を衝突させてビッグバン状態を再現し、宇宙の誕生や素粒子の起源、自然の基本法則について研究するための装置のこと。震災後の東北復興と科学振興の旗印として、いま期待を集めている。
冒頭の野尻の「新しい塔からの眺め」は、ILC研究のために東北を訪れた米国の科学者エレン・ベーカーが主人公。ILC公開日に知り合った一人の少年とその母親との出会いをきっかけに、素粒子物理学の新しい扉を開いていく物語となっている。物理の専門用語は、欄外に解説もありわかりやすい。
タイムトラベルの要素をリンクさせた柴田の「鏡石異譚」、建設を巡る人間ドラマを盛り込んだ小川の「陸の奥より申し上げる」も加えて、三者三様のILC後の世界が楽しめる。(早川書房 1500円+税)