ILC PROJECT [ 国際リニアコライダー計画 ]

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2014年01月14日

東北放射光施設/人知集め復興を側面支援

河北新報

丸3年となる震災復興の取り組みを、学術研究の面から後押しする構想が動きだした。そういうと、まず思い浮かべるのは東北の官民挙げて誘致を目指す超大型加速器「国際リニアコライダー(ILC)」だろう。
もうひとつのプロジェクトが、光を使って物質の構造を探る大型放射光施設である。国内には兵庫県の「スプリング8」など9カ所あり、日本が得意とするものづくりの素材開発や産業応用に寄与している。東北は空白地帯だった。
昨年10月に弘前、岩手、東北、宮城教育、秋田、山形、福島の国立7大学が連携することを確認し、東北大に「推進室」を設けた。
12月末の2014年度政府予算で文部科学省が要求していた調査費1千万円が盛り込まれ、国も前向きな姿勢を鮮明にするなど環境は整ってきた。ILCとともに復興を速める両輪として実現を急ぎたい。
放射光とは、1周約300メートルの円形施設で電子を光速近くまで加速し、磁石の力で電子を曲げた時に出る光のことだ。調べたい物質に当てて、詳しい仕組みを分析する。
人に例えるとエックス線写真で体内を診るように、物質の性質を決める構造を微細なところまでつかめる。では、どんな分野に向いているのだろうか。
経済界のうたう東北地域産業クラスター構想。「次世代製品の有機エレクトロニクスに有効」と推進室は説明する。さらに自動車に用いる燃料電池開発など、宮城県などに集積する製造業への活用を想定する。
農業では、作物の病気診断法を高めて生産性を上げることや、低コレステロールの油脂開発によって健康増進を図る。
このほか先進的な医療機器に役立つとされ、既存施設では多くの研究者が利用している。東北の7大学を中心に500人が活用し、10年間で延べ1万4千人の雇用を生むと試算する。
建設費は約300億円を見込み、着工から3年以内に稼働させたいという。本体の建設、施設周辺に期待される企業立地、ホテルなど来訪者による波及効果を合わせた経済効果は10年間で3200億円と予想する。
自治体の動きも活発になっている。宮城県の丸森町、松島町、大郷町が誘致を目指すと表明し、候補地の用地取得、提供を検討中だ。
ILCは、岩手県南部と宮城県北部にまたがる北上山地に巨大な施設を建設し電子と陽電子を光速近いスピードで衝突させる構想。物質の成り立ち、宇宙起源を探る。人々のロマンを満たすものとすれば、放射光施設はかなり現実的といっていい。
産業技術応用を通じて復興を側面から地道に支援する。どちらの事業も重要であり、素材開発や施設利用で補完し合えれば、相乗効果が生まれよう。
内外の優秀な研究者が集い、腕を競う一大拠点。子どもたちの教育に大きな刺激にもなる。ことしが正念場という意気込みで、着実に進めてもらいたい。