ILC PROJECT [ 国際リニアコライダー計画 ]

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2014年01月04日

国内候補・北上山地今年の展望(下)前向きな姿勢政府示せ

河北新報

◎高エネルギー加速器研究機構長・鈴木厚人さん

-2012年7月、スイスの欧州合同原子核研究所(CERN=セルン)で、質量の起源とされるヒッグス粒子が見つかった。それを精密に測定し、宇宙の成り立ちに迫る次世代加速器としてILCが望まれている。

「CERNの円形加速器LHCは、(複数の素粒子からなる)陽子同士をぶつけて新たな粒子を生み出すが、特定の粒子を調べるのには向いていない。ILCは素粒子の電子と陽電子を使うために反応がクリアで、ヒッグス粒子の本当の姿を探るのに適している。
今の世界は4次元とされているが、その背後には、まだ見えていない『余剰次元』があるかもしれない。ヒッグス粒子はわれわれの世界と余剰次元を結ぶ窓のよ うなものだと考えている。ILCならばその窓の形が分かるし、窓をのぞいて外の世界が5次元なのか、6次元なのかを探ることができる」

-日本政府はまだ誘致を表明していない。どう見るか。

「欧州は素粒子物理学の方向性を示す戦略の中で、『日本がILC計画をリードするべきだ』『日本が何らかの声明を出すことが外交ステップへの条件だ』と明示している。米国やアジアの科学者も同様のメッセージを出している。
政府内には『日本が最初に手を挙げると負担を押しつけられる』との懸念がある。ただこれだけ世界の期待がある時に、何も言わなかったら『日本は駄目かな』と思われてしまう。そうなると日本以外の国などが名乗りをあげてくるかもしれない」

-今、関係者がなすべきことは何か。

「政府は、誘致表明とはいかなくても『ILCに関心がある』『国際的な検討を始めたい』との姿勢を打ち出してほしい。今後何十年にわたり、この分野で日本が世界のトップでいられる好機を逃すことになりかねない。
われわれ科学者としても、経済協力開発機構(OECD)などに働き掛け、ILCが国際プロジェクトとして認められるよう努力したい。そうなれば政府も世界 に呼び掛けやすくなるだろう。文科省を中心に、どうやって国際協力関係を結ぶかについて検討が始まっており、できるだけ早く国際交渉に入れるよう、基盤を つくっていきたい」

<すずき・あつと> 東北大大学院理学研究科博士課程修了。専門は素粒子物理学。ニュートリノ研究の第一人者。東北大 大学院理学研究科長、副学長などを経て06年から現職。世界の主な加速器研究所長らでつくる将来加速器計画国際委員会の議長も務めた。仁科記念賞、日本学 士院賞などを受賞。67歳。新潟市出身。