宇宙の「本当のところ」を知る

 宇宙の本当のところを知る大切さ

科学は私たち人類が生きているこの自然や宇宙が、本当のところどうなっているかを明らかにする学問です。本当のところがわかればそれを利用して生活に応用することも可能になります。良い例は100年前に確かになった「ものは原子でできている」という見方です。それまでは、世界は羊羹のように連続したものが実体であるとの見方と拮抗していました。しかし、一旦ものには小単位がある、という考えが明らかになると、その小単位をうまい具合に組み合わせれば生活に活かせることがはっきりし、20 世紀には電気製品を始め、化学製品、巨大建築物、飛行物体、宇宙の乗り物などを作ることができるようになりました。

 自然を調べる装置「加速器」

自然や宇宙の本当のところを知るためにはそれらを構成している基本単位を知るということがとても重要になったのです。この基本単位を知るための道具が加速器です。加速器を使って自然を調べた結果、生活をまかなっているものは、たった3種類の基本粒子でできていることが判明しました。それを学者はアップクォー ク、ダウンクォーク、電子と呼びます。星から地球のなにからなにまで、この3つの粒でできていることがわかったのです。それでは、人類はもう全てがわかってしまったのかというと、面白い事に、どうもこの自然・宇宙にはそれ以上の粒子を作る能力があることが、やはり加速器を使った研究からわかりました。

 能ある宇宙は爪隠す

宇宙というのは普通には3本の爪しか見せていないのですが、加速器で実験ができるところでは、その他の爪を見せてくれるのです。現在までに確かめられたことは、電子やアップクォークやダウンクォ−クのように「もの」となれる12種類の基本粒子があり、それらの「もの」の運動状態を変えたり粒子を変化させたりする4種類の「力」というものも、対応する基本粒子の働きのおかげであるということです。この考えを標準理論と言います。そして、最近見つかったヒッグス粒子も基本粒子として存在することが確認でき、宇宙全体は17種類の基本粒子から成り立っていることがわかりました。繰り返しますが、通常目にする「もの」は、この内の3種類の基本粒子からしかできておりません。宇宙の本当のところを知るためには、加速器でその他の基本粒子を実験室でつくりださないとわ からないのです。

 奇妙な粒子「ヒッグス」

では、宇宙の本当のところは、この17 種類の基本成分・素粒子からできていると考えてよいのでしょうか。実は、ヒッグス粒子もようやく、宇宙が持っている能力のあらわれであるとわかったにすぎませ ん。ヒッグス粒子はものを構成するものでもなく、力を伝える粒子でもなく、ひとつだけぽつんと標準理論の中で存在している粒子です。標準理論になくてはならない存在ですが、一方、その性質が他の粒子とあまりにもかけ離れていて奇妙でなりません。

そこで、宇宙の仕組みがそんなに奇妙ではないようになっているために、ヒッグス粒子の仲間がいるのではないかとか、もっと基本的な粒子から構成されているのではないかとか、あるいは、その奇妙さをうちけすために科学者が超対称性粒子と呼ぶ、もっと数多くの基本粒子が存在するのではないか、などが考えられています。

 宇宙を解くカギ「ヒッグス粒子」を調べるのに最適な加速器ILC

つまり、標準理論にあらわれる素粒子たちは、ぎりぎりようやく確認ができただけで、その詳細がわかっていないこともあり、理論自体がひどく不思議なのです。宇宙が本当のところどうなっているのかを知るためには、今はヒッグス粒子を攻めればよいのです。

そこで計画されているのがILCです。ILCはヒッグス粒子を詳細に調べるための最も現実的な加速器施設です。ILCでも新しい素粒子の発見が期待できます。新しい素粒子は、これまでに人間が気がつかなかった宇宙の本当のところを直接教えてくれる存在ですから、新粒子発見はもちろん期待するところです。しかし、あらかじめどれだけのエネルギーなら確実に発見できると予測することは至難の技です。しかし、今の標準理論ではっきりしていること は、ヒッグス粒子が本当のところを知るための鍵であり、ILCは確実にその奇妙さに迫ることができることです。研究者はその奇妙さのなかに、より奥深い宇宙の本当が隠されていると考えています。ILCで宇宙のより奥深い本当のところがわかったら、賢い人間のことです、それを有効に応用していくことでしょう。ILCが明らかにする宇宙の本当のところを応用した50年後、100年後の人類のことを想像すると、とても楽しみです。